■「心臓の終末像」といわれる【心不全】

 心臓のポンプ機能が低下する状態が心不全です。全身に送られる血液量が不足するため、疲労感、息切れ、むくみ、体重増加などの症状がみられ、徐脈・頻脈の不整脈が起こることもあります。心筋梗塞や心臓弁膜症、心筋症など、いろいろな心臓の病気によって引き起こされ、重症になると「心臓の終末像」とも表現されます。

 心不全の原因となる病気がわかっている場合はその治療に並行して、薬物療法をおこないます。

 さらに、不整脈がみられる場合は、徐脈であればペースメーカーを、心室頻拍や心室細動による致死性頻脈の発作がある場合は「CRT-D(両室ペーシング機能付き植え込み型除細動器)」というデバイスを植え込みます。CRT-Dは心室頻拍・心室細動の治療で用いられるICDの機能に、心不全で起こる心拍のリズムの乱れを整える「両室ペーシング」という機能を加えたものです。また、不整脈が起こりにくくするために、心筋焼灼術がおこなわれることもあります。

■血圧とともに、脈拍も日常的に測定を

 心臓以外の病気でも、不整脈の症状をあらわすものがあります。甲状腺機能亢進症(頻脈)、甲状腺機能低下症(徐脈)、感染症による発熱などがあげられ、また、服用している薬剤の副作用として起こることもあります。動悸やめまい、胸の違和感、息切れ、また走ったときや階段を駆け上がったときにこれまで感じたことのない息切れ、息苦しさをおぼえたら、内科を受診して原因の有無を探っておきましょう。

 とはいえ、不整脈は自覚症状のないものもあり、必ずしも早期にとらえられるものではありません。そこで、日常的に自分で脈拍測定を習慣づけることがすすめられます。さいたま赤十字病院循環器内科部長の稲葉理医師はこう話します。

「家庭用の血圧計で脈拍も測定できます。安静時の脈拍が1分間に110回以上、あるいは2回測って、1回目が60回、2回目が100回のように10回以上のバラつきがある状態が数日続くようなら、内科を受診して、心電図検査を受けることをおすすめします。血圧を測る際に、脈拍数にも注意を向けて、ふだんからご自分の脈の状態を把握しておいてほしいと思います」

(文・別所 文)

【取材した医師】
聖マリアンナ医科大学病院循環器内科教授・ハートセンター長 原田智雄 医師
さいたま赤十字病院循環器内科部長 稲葉 理 医師

聖マリアンナ医科大学病院循環器内科教授・ハートセンター長 原田智雄 医師
聖マリアンナ医科大学病院循環器内科教授・ハートセンター長 原田智雄 医師
さいたま赤十字病院循環器内科部長 稲葉 理 医師
さいたま赤十字病院循環器内科部長 稲葉 理 医師

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