心房細動が続くと血液が流れずによどんでしまい、そこに血栓(血のかたまり)ができやすくなります。この血栓が血流に乗って脳まで到達し、脳の血管を詰まらせて脳梗塞を引き起こすのです。心房細動のある人はない人に比べて、脳梗塞の発症率が2~7倍にのぼるといわれています。また、心房細動が原因の脳梗塞はほかの脳梗塞に比べてダメージを受ける範囲が広く、2割が死亡し、4割に重い後遺症が残るとされています。

 脳梗塞の予防に重要な薬に抗凝固薬という血液をさらさらにする薬があります。心房細動と診断されたら、医師に現在の身体の状態(年齢、高血圧や糖尿病などの有無)を説明して、早めに服用を続けるほうが安心です。

■心筋焼灼術で心筋のけいれんの伝播を防ぐ

 心房細動の根治治療の中心は「心筋焼灼術」です。足の付け根の血管からカテーテルという細く軟らかい管を入れて心臓に到達させ、先端についた器具でけいれんする心筋を焼く(焼灼する)治療です。焼灼することで周囲にけいれんが伝わるのを抑えて、不整脈を起こさないようにします。

【表の解説】発作性心房細動が偶然みつかって、動悸などの症状のない場合、心筋焼灼術を受けるか、薬物療法で経過をみるか、患者が悩むことがあります。数回程度の発作性では、すぐに脳梗塞に結びつくことは
まれなため、「定年退職を待って」「子どもの受験が終わったら」など
患者の事情に合わせて、心筋焼灼術を先に延ばし、薬物療法をおこなうことも可能です。しかし、持続性に移行すると治療困難になることもあるため、初期の発作から1年くらいを目安に、心筋焼灼術を検討することがすすめられます。
【表の解説】発作性心房細動が偶然みつかって、動悸などの症状のない場合、心筋焼灼術を受けるか、薬物療法で経過をみるか、患者が悩むことがあります。数回程度の発作性では、すぐに脳梗塞に結びつくことは まれなため、「定年退職を待って」「子どもの受験が終わったら」など 患者の事情に合わせて、心筋焼灼術を先に延ばし、薬物療法をおこなうことも可能です。しかし、持続性に移行すると治療困難になることもあるため、初期の発作から1年くらいを目安に、心筋焼灼術を検討することがすすめられます。

 心筋焼灼術の基本は、けいれんしている部分を高周波の熱でピンポイントで焼く高周波アブレーションです。

 もう一つ、カテーテルの先につけたバルーンを用いて焼灼する方法もあります。バルーンには「クライオ(冷凍)」「ホット(温める)」「レーザー」の3種類があります。いずれもバルーンを膨らませて、けいれんしている心筋に一気に押し当て、円周に沿って焼灼するというものです。この方法は、心房細動が起こりやすい左心房の「肺静脈開口部」という部分を焼灼する場合にのみ適応になります。手術時間が短く、高周波アブレーションに比べて簡便におこなえます。焼灼する部位がバルーンの形やサイズにぴったりで、ほかの部分に心房細動が起きていないようなケースに最もすすめられます。

■失神による転倒や事故が危険視される【徐脈】

 1分間に脈拍数が50回以下の場合に徐脈とされますが、心筋梗塞などの心臓の病気に併発するものや、洞不全症候群、房室ブロックという心臓の病気、加齢によるものなど、原因はさまざまです。心拍が少ないために全身の血液量が低下して、めまいや息切れ、むくみ、疲労感などがあらわれ、失神することもあります。房室ブロックでは一時的に心停止を起こすことも。また、意識が遠のいたときに転倒したり、運転中の事故につながったりするなど、二次的な危険がある不整脈です。

 徐脈がある場合は、ペースメーカーの植え込みを検討します。ペースメーカーは電気刺激でリズミカルな心拍をうながすもので、徐脈による失神を起こしたことのある場合や、脈拍が1分間に40回以下の場合に、植え込みがおこなわれます。

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心臓のポンプ機能が低下する「心不全」