都は、18歳以下のすべての子どもに対して一律月額5000円(年額6万円)を給付する方針ですが、この所得制限撤廃は、異常な事態をようやく普通の状態に戻したにすぎません。所得制限により、高所得世帯は高額納税をしているにもかかわらず児童手当の対象外となっている。これまでの「働くと損をする」仕組みは、労働や子育てへの意欲を引き出すという意味でも、完全に失敗しています。社会保障の基本のルール設計として、誰も排除しないことが大切になります。等しくベースがあるうえで、困窮家庭にある子は皆で支え、より手厚い補助を受けられるようにするのがあるべき姿です。
であるとすれば今回の私立中学10万円助成も、所得制限を設けずに、一律支給とすべきだと考えます。親に渡すのではなく、子ども一人ひとりに投資をするという視点を持つことが大切です。子どもを親の属性で分けることは、教育の機会均等とは別方向にいくことになります。憲法14条と教育基本法4条でも社会的身分・経済的地位によって差別されない平等をうたっています。お金持ちの家庭の子も排除せず一律に。家計が苦しい家庭の子には、そのうえで支援を積み上げるべきです。
■私学の公共化に向けて抜本的な改革を
国は2021年度までの5年間、実証事業として、私立小中学校等に通う児童生徒への経済的支援を行いました。しかしその政策の効果検証がどこまでなされているのか、不明です。
また2020年度からは、国や都による私立高校の授業料実質無償化の制度があります。子どもが私学に通う世帯への助成の取り組みがすでにあるなかで、今回、私立中学生世帯への10万円助成策が検討されています。政策のやりっぱなしが一番よくない。しっかりと検証をしたうえで、子どもの教育のために何が効果ある政府投資かを考えていく必要があります。
教育の機会均等が目指す先は、「授業料無償化」だと考えます。私立中学だけでなくインターナショナルスクールやフリースクールも視野に入れながら、抜本的改革を進めていくことを期待します。公立であれ私立であれ、どんな子も教育機会の選択肢が広く持てる社会、という次の次元にいくべきです。
(構成/AERA dot.編集部・市川綾子)