岸田首相は、慢性の鼻づまりなどの症状があり、その原因となっていた「鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎」に対処するため、11日に東京都内の病院で内視鏡による手術を受けると発表した。「慢性副鼻腔炎」はかつて蓄膿症と呼ばれた病気で、近年は減少傾向にある。しかし、代わりにアレルギーと関わりの深い難治性の慢性副鼻腔炎が増加している。週刊朝日の連載「日本人の病気の最新治療」から、慢性副鼻腔炎について専門医に取材した内容を紹介する。
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かぜやインフルエンザウイルスなどの細菌・ウイルス感染、花粉やハウスダストといったアレルギーなどから引き起こされる鼻炎の症状。これらをきっかけに起こる病気の一つが副鼻腔炎だ。
副鼻腔とは、顔の左右にそれぞれ4個ずつ、合計8個ある空洞のこと。これらは小さな穴で鼻腔とつながっているが、粘膜の炎症や鼻水によって副鼻腔と鼻の間にある通り道がふさがって、副鼻腔から分泌物や異物を排泄できなくなり、鼻水や膿がたまることがある。
発症から4週間以内は「急性副鼻腔炎」、発症して3カ月以上症状が続けば「慢性副鼻腔炎」と呼ばれる。
副鼻腔炎ではどのような症状がみられるのだろうか。大阪大学医学系研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学の前田陽平医師はこう説明する。
「粘り気のある鼻水や膿のようなものが出る、鼻づまり、頬や顔面の痛み、においがわかりにくくなる、くさいにおいを感じる、などが典型です」
通常はこれらの症状のいずれか、または複数の症状が同時にみられる。
■歯が原因となる歯性副鼻腔炎も
汚い膿が出るタイプの古典的な慢性副鼻腔炎は、かつては「蓄膿症」と呼ばれた。戦前・戦後の子どもによく見られた病気だったが、近年は衛生状態が良くなり、患者は減少傾向という。
その半面、アレルギーとも関連の深い難治性の「好酸球性副鼻腔炎」が増加している。「好酸球」とは、アレルギーを起こしたときに増加する細胞だ。好酸球性副鼻腔炎では、この好酸球が副鼻腔粘膜に過剰に集まってくるのが特徴だという。慶友銀座クリニック院長の大場俊彦医師はこう話す。