「今日は右に行く? 左に行く?」子供に聞く
この前、教育経済学者の中室牧子・慶應義塾大学教授から伺ったのですが、中室さんの研究分野でわかってきていることとして、伸びる子供の最大のポイントは自己決定力らしいのです。小さい頃から自分の意思で何かを決めるということをやっているかどうかが、重要というお話でした。そういう子は、経験したことのない環境に強く、チャレンジにも積極的で、変化への対応力が高いのでしょう。
ところが、日本の教育は長い間、子供自身に決めさせない教育、つまりあらかじめ決まった「正解」を教える教育ばかりをしていた。これは、変化に対応するという観点からは最悪です。もし家庭で何かやるとすれば、まずは学校や塾で教えない自己決定力を育てる工夫からだと思います。
保育・介護事業の大手、ポピンズの轟(とどろき)麻衣子代表取締役社長は海外で暮らした経験が長くグローバルな視点を持っている方です。休日に一家で遠出をするとき、全部子供たちに決めさせるそうです。玄関を出た瞬間から、「今日は右に行く? 左に行く?」みたいな感じで。駅について、どの電車に乗ってどこまで行くかも子供任せで、時にはとんでもなく遠くまで連れていかれたりするらしいんですけど、まさに自己決定力のトレーニングですよね。さすがだと思いました。
中高生になっても「何になりたい?」と聞こう
二つ目は、自分のやりたいことをはっきり持つということ。これはみんながみんな、子供の頃からそうした明確な意思を持てるわけではないと思うのですが、たとえぼんやりとでもそれを考えさせることは重要だと思います。
小学校の頃はよく、作文などで将来の夢を書かせますよね。でも中学校や高校になると、学力を上げる教育が中心になりそういう課題は少なくなる。社会に出るのが近い中高生の時期こそ、自分が何をしたいのか考えなきゃいけないのに。むしろ将来のことを口にする子のほうが、「かっこつけやがって」みたいに思われて、教室で浮いてしまったりするわけです。それはおかしいし、やはり日本の教育が抱えている課題だと思います。
親としては、子供が中高生になっても「将来何になりたいの?」などと軽く声をかけてみるといいと思います。そして子供が言ったことを否定せずしっかりと聞いてやること。結局は、自分がやりたいことをやるというのが、将来大きなポイントになってくるのです。