唯一の外出は、ゲームの課金のためにコンビニに行くこと。それも、友だちに会うのが怖いので、真夜中と決めていた。
「とにかく友だちに会いたくなかった。自分のことを思い出さないでほしいと思ってた」
2年になり、他県の通信制の高校に転校することにした。地元の学校にしなかったのは、友だちに会いたくないからだ。しかしそこもすぐに不登校になった。単位を取るために、最低限の課題をこなすのが精いっぱいで、家に引きこもった。
現実的なことは極力考えないようにしていたが、高校卒業の時期がくると、「このままじゃだめかもな」と思うようになった。
「大学に入って巻き返すしかないか」
地元の予備校は友だちに会う恐れがあるため、遠くの県の予備校に通うことにした。
最初のうちは授業に出ていたが、やがて休みがちになった。9月になると、全く行けなくなってしまった。やがて受験の時期になり、センター試験に申し込んだが、当日、試験会場に行くことができなかった。
「ごめん、行けない」
電話口の母が落胆するのが分かった。
■生まれた土地を離れて気がラクになったが
「これだけお金を出してもらったのに、情けない。親に迷惑をかけてしまっている」
自責の念が募った。やりたいことも、目標も何もない。しかし、自分がこの先やっていくためには「大学しかない」と思っていた。
実家に戻り、隣の市の予備校に通うことにした。通学に片道2時間。朝6時半のバスに乗って、帰宅するのは8時で、なんとか半年は通ったが、疲れてしまい、朝起きられなくなった。間に合わないから休みがちになり、やがて再び不登校に。一応はセンター試験に申し込み、なんとか1日目は試験会場に行ったが翌日は無理だった。
またもや、受験に失敗してしまった健斗さん。
「お母さんに申し訳ない」
何をする気力もなく、再び部屋に引きこもった。
そんなときに、父親が転勤で他県に引っ越すことになった。
「ついてくるか?」と聞いてきた。