容疑者が盗撮に使ったカメラが仕込まれたかばん。先端の小さな穴から撮影できるという
容疑者が盗撮に使ったカメラが仕込まれたかばん。先端の小さな穴から撮影できるという
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 2月14日、商業施設などで100人以上の女性に盗撮を繰り返したとして46歳の男が京都府警に逮捕された。この男は一部で「カリスマ撮り師」と呼ばれており、10年以上も盗撮で生計を立てていたとされる。盗撮の時効である3年が過ぎるのを待ってからアダルト動画サイトで販売していたとみられる。男は逮捕されたが、盗撮された画像はネットで拡散され続ける可能性がある。それにもかかわらず、なぜ時効が設けられているのか。性犯罪に詳しい弁護士は「時効に焦点をあてた法改正が必要だ」と指摘する。

【容疑者が実際に使っていた小型カメラ】

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 大阪、京都で盗撮を繰り返していたとして両府の迷惑防止条例違反容疑(ひわいな行為の禁止)で京都府警に逮捕されたのは京都市伏見区の無職、森雅紀容疑者(46)。

 盗撮動画をアダルト動画サイトで販売していたが、「条例の時効である3年を過ぎてから販売した」という趣旨の供述をしていると報じられている。被害者は1万人以上にのぼるとみられるが大半が時効になっているため、時効を迎えていない100件超の盗撮についてのみ立件された。

 盗撮については、各都道府県の迷惑防止条例で取り締まるケースが大半だが、処罰対象の行為や罰則も自治体によってばらばらで、かねてその問題点が指摘されてきた。常習性があっても「懲役1年以下または100万円以下の罰金」などの罰則が通例で、軽すぎるとの声も出ていた。

 このため、現在は、盗撮行為を取り締まる「撮影罪」を含む、刑法の性犯罪規定の見直しに向けた動きが進んでいる。撮影罪では、違反者には「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」。映像を不特定多数に提供する行為には「5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金」などを科す案が示されており、条例より重罰化される。

 ただ、その撮影罪にも「5年」の時効が適用される見込み。今回の森容疑者のように数えきれないほどの盗撮を繰り返したうえで、罪に問われないように「時効後の販売」を画策する人間にとっては、たとえ5年に延びたとしても、時効を“悪用”できてしまう可能性がある。

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盗撮犯は知的レベルが高く家庭持ちが多い