「非常に狡猾な手口です。時効に対する考え方を変え、時効に焦点をあてた法改正をしていく必要があると思います」
そう話すのは、性犯罪被害者の支援に携わり、「盗撮罪」の法整備を訴えてきた上谷さくら弁護士だ。
上谷弁護士によると、刑法に時効が存在する趣旨としては、時間の経過による「証拠の散逸」や「被害者の処罰感情の薄れ」などが挙げられるというが、こう疑問を呈する。
「被害者の処罰感情の薄れというのは、明らかに違います。盗撮だけではありませんが、これは実際に被害に遭っていない人の考え方に基づくものであって、実態に即していません。また、事件から時間がたつと証拠が散逸してしまう可能性はありますが、盗撮は画像や動画が動かぬ証拠として残っていますから、この考え方はあてはまりません。なにより、被害者の画像がネットでさらされ続けることは被害の拡大ですから、時効の制度自体が合わないと思います」
盗撮犯の傾向としては、成人の場合、知的レベルが高く、定職につき家庭を持っている人が目立つという。
「なぜこんな人が? という人が多い」(上谷弁護士)
一方で、加害者の罪に対する意識が低いのもこの犯罪の特徴だ。
「相手に触っていない」
「相手は気づいていない」
などと独自の論法で罪の重さを認めないばかりか、盗撮以外の性犯罪者に対しては「許せない酷い犯罪行為」などと非難する盗撮犯までいるという。
昔からあったであろう『のぞき』なども、罪の意識が薄くノリでやっていた面があると想像しますが、今の犯罪者もその点は共通しているのではないでしょうか。画像に残し、さらにネットで第三者にさらすという行為の重大さを理解していないケースが目立ちます。一方で被害者は外出が怖くなったり、会社や学校に二度と行けなくなったりする人もいます。加害者の罪に対する意識と、実際の被害の重大さに大きな乖離(かいり)があります」(上谷弁護士)
森容疑者は、今回が初犯。起訴されて裁判になったとしても、実刑になる可能性は低いとみられる。