松川るい参院議員(写真/米倉昭仁)
松川るい参院議員(写真/米倉昭仁)

 日本の少子化が急激に進むなか、岸田文雄首相が掲げる「異次元の少子化対策」を巡る議論が国会で熱を帯びている。その背景の一つが、昨年の「出生数80万人割れ」の衝撃だ。80万人割れは2033年と推定されていたが、実際は11年も早かった。少子化が進めば、内需中心の日本経済に深刻な影響を与えるだけでなく、社会保障制度を維持するのも困難になる。少子化問題への取り組みについて、昨年10月に施行された「産後パパ育休」(出生時育児休業)制度の創設に深くかかわった自民党女性局長・松川るい参院議員に聞いた。

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「異次元の少子化対策」の柱は、(1)児童手当などの経済的支援(2)幼児・保育サービスの拡充(3)育児休業制度の強化や働き方改革――の三つである。

 一つ目の柱である児童手当などの経済的支援について尋ねると、財源の問題はひとまず脇に置き、松川局長はこう語った。

「もともと児童手当は、経緯からいえば、経済的に苦しい家庭であっても子どもを健全に育成できるようにサポートする、という発想で設けられました。ある意味、貧困対策の色彩が強かったわけですが、出生数が80万人を割り込む急激な少子化に直面する現在、これからは少子化対策として有効に機能することを目指さなくてはなりません。そのためには、これから結婚する人や家庭が『子どもを産んでも、児童手当があるから安心して育てられる』と感じられるように、支給額を大きく増やすべきだと思います」

 現在、児童手当には所得制限が設けられている。世帯で最も収入が高い人の年収額が1200万円以上であれば支給されない。

「児童手当の所得制限については、今、自民党の中でも議論している最中ですが、私は所得制限撤廃に基本的に賛成です。少子化傾向を反転させていくためにも、制限を撤廃して、『子育てを国は全面的にサポートしていきます』という力強い明確なメッセージを打ち出すべきだと思います。ただし、財源が課題ですから、撤廃するなら、支給書類に『辞退します』というチェックボックスを設けて、児童手当を必要としない、例えば何億円も稼ぐような人には辞退を促す仕組みもつくるべきだと思います」

「1200万円」制限は見直すべき

 いずれにせよ、現状の1200万円の線引きは「ちょっと低すぎる」と、松川局長は言う。

「年収が1200万円あったとしても、税金や社会保険料を引かれたら、手取り額は800万円ほどですから。それで、子どもが2人以上いて物価の高い都心に住んでいたら、生活に余裕がありあまるというわけではありません。仮に所得制限撤廃に至らなかったとしても、所得制限額は大幅に見直すべきだと考えます」

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「家庭第一はブレていません」の真意