報道によると、事故はこの路地の5・7メートルほどの長さの部分に集中している。そこに300人以上がひしめいていたのではないかという。


 改めて見ても、想像がつかない。


 訪ねたのは夜だった。人通りがほとんどない。急な坂をゆっくり上り、下ってみる。


 ホテルの壁に沿って、犠牲者に贈る言葉が書かれた紙やお酒の瓶が捧げられ、それらを雪を防ぐ透明のビニールシートが覆っている。坂を上りきったところにのびる道の店はほとんどが閉まっていた。そのなかで開けている店に話を聞いてみた。


 そこからは、まるで新型コロナウイルスに呪われたような梨泰院の街が浮かびあがってくる。


事故のあった通りは閑散としていた
事故のあった通りは閑散としていた

*(後編「『梨泰院はコロナに呪われた』飲食店長が嘆く理由とは 事故後の街を旅行作家の下川裕治が歩いた」に続く)


(下川裕治)


■しもかわ・ゆうじ 1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(週)、「沖縄の離島旅」(毎月)。

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【動画はこちら】下川裕治が歩く「梨泰院のいま」