しかし、学校現場の多くは、定期的に各家庭に担任が電話をして状況把握し報告する、旧体制の情報収集システムが使われている。「働き方改革」を問われる今、何年前のシステムだろう。

 プログラミング教育を先行実施された先生方は、(グーグルフォームなどの)インターネットを活用すれば、容易に対応できる内容であることをSNSで発信している。そしてなかなか実現されないもどかしさを綴っている。

 今こそ、学校現場もテクノロジー開花し、学校だけが学びの場ではなく、社会全体に学びの場があることを体験する時ではないか。

 思えば、昨年末に「GIGAスクール構想」という、児童生徒に一人一台端末に向けた具体案も政府から示された。もし、このコロナ対応の最中、一人一台端末が配備されていたら、上述の休校対応も大きく変わっていただろう。

 テクノロジーは、時間と距離をフラットにして、情報共有を可能にする。文部科学省がこれからの教育のキーワードにあげる「遠隔授業」の事前検証が、ほんの少しの努力と規制緩和の勇気で、部分的にでも、すぐにでも試行できるのではないだろうか。

 先日、無観客となったプロ野球オーブン戦のニュースで、ホームランボールがスタンド席に当たる音が報じられていた。通常と違う環境だからこそ、日頃は聞こえない音が聞こえた訳だ。

 全国一斉休校、日頃は見えない課題も露出してきた。学校現場以外の組織が、その課題に取り組み始めている。ならば、児童生徒の実態を知る学校が、新たな挑戦をしても良いのではないだろうか。

 日本には、熱き思いを秘めている教員が多くいることを、この2年間の全国行脚で見てきている。是非とも、教育行政も現場の新たな挑戦を後押しして欲しい。一人一人の児童生徒を想う教師の心を、規制のブレーキで止めることだけは避けたい。

※新型コロナウイルス対策の休校措置によって、思いがけない形で授業が終わってしまった先生方に向けたプログラミング研修が3月16日(月)にオンライン( Zoom もしくは YoutubeLive )で実施されます。福田晴一さんが所属する「みんなのコード」代表の利根川裕太さんと、情報通信総合研究所特別研究員・平井聡一郎さんによる対談をはじめ、プログラミング教育を先行実施した全国各地の先生方のレポートや、先生方の質問に回答するコーナーなどを予定。詳細は「みんなのコード」ホームページにてご確認ください。

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福田晴一

福田晴一

福田晴一(ふくだ・はるかず)/昭和31(1956)年、東京都生まれ。みんなのコード学校教育支援部主任講師、元杉並区立天沼小学校校長。約40年の教員生活を経て、2018年4月NPO法人「みんなのコード」に入社。61歳で新入社員となる。2020年度からの小学校におけるプログラミング教育必修化に向け、指導教員を養成すべく、全国を東奔西走中

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