渡辺:相当なストレスだったね。僕は本店とモニターでやりとりする場面が多かったんだけど、どんな言葉を投げつけても「しれっ」と同じテンションで返されて、それがまたイラッとするんですよ。吉田がゴミ箱を蹴るシーン、あれはマジで蹴ってます(笑)。

佐藤:伊崎は福島の出身で、原発に地元の未来を感じてきた人物でもある。事故が起こって、原発を全否定するのは簡単だけど、現地の人々が置かれている状況はそうではないんですよね。

渡辺:「俺たちは間違っていたのか」と言う伊崎の言葉は深い。

 原子炉建屋に作業員が突入する場面など、随所で「若い者は行くな」という言葉が出てくる。

佐藤:タイトルの「50」には、実はそういう意味も含まれているんです。「50歳以上がまず、行く」という。実際、現場にいたらそうなるだろうね。

渡辺:そう思う。命がけって簡単に言ってしまうけど、あの状況で原子炉建屋の中に入ってベントをするなんて本当にボーダーで、そこではやはり年齢が加味されるでしょう。世代的に原発にずっと携わってきたという思いもあるだろうね。自分たちが責任を取るんだ、という。

佐藤:言うのは簡単で、でも持つのが一番難しいものは「勇気」なんですよ。彼らが持っていたそれを感じてもらえればいいなと思いながら演じました。

 役柄と同様、ほぼ同い年である二人。ずっとお互いを見ながら俳優人生を走ってきた。

佐藤:「同胞」と言うと大げさかもしれないけれど、そういう思いはありますね。しかも彼は“ケン・ワタナベ”として世界に飛び出していった。前にとにかく進んでいく力強さは、後進に勇気を与えていますよ。自分にはできないことだしね。

渡辺:僕もね、なかなかここまで全幅の信頼をおける相手っていない。本当に「頼む!」「よし、まかせろ!」って感じで、この役通りでしたね。

佐藤:「許されざる者」(2013年)で共演したときに「浩ちゃんの100本目の作品には、出演しに行くからさ!」って言ってくれたのを覚えてますよ。今はもう100本を超えてしまったんだけど。

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