包装されていない具材がなければ、魚から作ればいいじゃない……と、アントワネット妃ばりに浅はかだった自分を、スーパーに足を踏み入れたとたん恨んだ。あらためて見回すと、ありとあらゆる生鮮食材が、ビニールで包装されている。
ならば。おつり(ゴムで引っ張れる)や商品をザルに入れた昔ながらの八百屋さんや魚屋さんならどうよ。期待して、有名商店街の店頭の写真をチェックしたが、例えばザル八百屋も、今どきはビニールに入れた野菜をザルに入れている店が多い。
とりあえず塩や油などの調味料を求め、日曜しかオープンしない「nue(にゅ) by Totoya」(渋谷区代々木)へ。こちら、すべての食材が量り売りで買える自然食品店だ。
ごみゼロ料理の買い出しとなると、食材を入れる布袋や空き瓶などをリュックとトートバッグに詰めて、買う前からかなりの大荷物。ちなみにうちにある一番大きなトートバッグは、創業家族がトランプ支援で知られるメーカー製で感じが悪いが、まあしょうがない。
同店で、塩、オリーブオイル、小麦粉、はちみつ、ドライトマト(だし用)など、持参の瓶や袋に使うだけ詰めて、全部で3千円ちょっとで購入。
「ネイキッド(包装しない)野菜なら、青山ファーマーズマーケットにけっこうありますよ」
事情を話すと、同店の飯島美聡さんがおしえてくれる。ちなみに数年前から野菜は、包装していないものだけを購入して生活しているそうだ。
「クッションがついていない桃だけは、まだ見つからないですね」(飯島さん)
さっそく東京・青山の国連大学前に移動すると、あるある! 裸の大根やしょうが、ジャガイモ、卵などをゲットできた。続いて醤油の量り売りができる専門店がある銀座のデパートへ。ふと魚売り場をのぞくと……お目当ての包装されていない魚の切り身が!
極上のおまけがついた
「ごみゼロ活動をやっているので、このまま買えます?」
店員さんに正直に告白し、持参したバットを渡すと、バットに新聞紙をかぶせて、そこに値段のシールを貼ってくれた。
第2関門はレジ。ただし包装不要を告げると、「あー、そうですか」と、すんなり対応。そして最終関門は、新聞紙1枚をかぶせただけで生の魚を運ぶ、地下鉄移動だ。トートバッグに顔を突っ込んでクンクンするなど、かえって挙動不審だが、寒さも幸いして、無事家まで運ぶことができた。ふー。
そうして買い物開始から8時間後、やっとのことで調理開始。フードプロセッサーで作ったすり身は、焼くとちくわに、蒸すとはんぺんに、揚げるとさつま揚げになる。おでんの具材の関係性もよくわかった。
最後に卵の殻などは庭に埋め、片栗粉を作ったジャガイモの搾りかすは犬のごはんに。また大根などの皮類できんぴらを作ったら、魚の値段シールと、醤油の瓶に貼られた購入済みテープの2点のごみだけが出た、ごみ「ほぼ」ゼロおでんの完成となった。
包装の多さを体感して、ごみ削減に目覚めるほか、自然のおいしさという極上のおまけも付いてくるごみゼロ料理チャレンジ。次の日曜にぜひ。(ライター・福光恵)
※AERA 2020年2月3日号