──不合格だったとしても、もちろん次につながることがあるわけですね。

柳沢:人間、成功したときは、誰も反省しませんよ。失敗すると「ここが悪かった」「あそこが悪かった」といろいろ考える。そういう意味では、失敗は成功のチャンスをつかんだということなんです。野球で3割バッターというように、10チャレンジして3当たれば、人生本当にプラスなんですよ。半分以上が失敗だと考えると、なるべく早く経験しておいたほうがいい。

吉野:多くの女の子は「失敗しちゃいけない」とずっと思って育ってきています。お母さんからもお父さんからも言われて。小学校のときも「塾でこんな点数とったらお母さんが嫌な顔をした。失敗しちゃいけないなぁ」と。ですから「失敗していいんだよ」と言うと、ふっと肩の力が抜けて、いろいろなことができるようになるんです。鴎友では、入学式の日に「教室は失敗していい場所です。いっぱい失敗しようね。そこから始まるんだよ」と伝えています。

柳沢:多くの子どもや親御さんにとって、中学受験は最初の失敗かもしれませんが、大学入試にしたって人生の途中経過に過ぎないわけです。子育てのゴールは、自分が死んだ後、子どもが自分で飯を食えるようにすること。これを忘れないでいてほしい。

吉野:11歳、12歳ですから、これからまだまだ先があるわけです。合格した子というのは、最初のゴールを早く通過しただけのこと。そこで失敗しても、この後頑張れば次のテープを早く切ることができるのです。中学受験が最後のゴールじゃないんですから。

柳沢:40歳になって初めて失敗、などとなったら、人生本当に大変ですよ。失敗は早いほうがいいんです。

(ライター・黒坂真由子)

AERA 2020年2月3日号