柳沢:関係があるのは「1年生の終わりの成績」。これは、将来を予測するのにかなり有効な資料になります。つまり、どれだけ早くその学校に馴染んで、そこで自分の力を発揮できるか。そういう意味では、心の中に何かわだかまりがあると、自分のエネルギーをマイナスの解消に使うことになってしまいます。早く馴染めれば、自分なりの力が発揮できるものです。

吉野:むしろ「不合格だったところには行かなくて良かった」と思えるよう、決まった学校を最善の場とするように、親が働きかけることが大切です。学校が「自分の居場所」にならなければ、安心して学校生活を送ることはできません。

柳沢:人生には運もありますからね。実は受かった場所が一番いい場所なんですよ。学校の先生が試験問題を作るのですから、受かったということは、「その先生たちと相性がいい」ということなんだな、と。

吉野:入試は学校の顔ですからね。学校側は「こんな子に来てほしい」という思いを試験問題に投影しています。例えば鴎友では、理科の問題に女性の身体についての設問を出したことがあります。これは「自分自身の身体を大切にできる子に来てもらいたい」という思いがあるからです。そういった意味でも、受験の合格、不合格は一つの「縁」と捉えることができます。また、受かった学校の授業に十分についていけるということを表してもいますしね。

柳沢:教師もそうですが、親にも演技が必要です。合格発表の後ではなく、試験を受ける前から準備しておいたほうがいいですね。三つ受けるとしたら、「どこに行っても面白そうだね」「第1志望がここなのは知ってるけど、こっちも面白そうだと思うわ」とかね。落ちたときのために「想定問答」も用意しておいたほうがいいですね。とっさに対応できるように。

吉野:親自身の希望もあるかもしれませんが、子どものこれからを考えれば、悲しんでいる場合ではありません。子どもが新しい環境で自分の力を発揮できるように、受かったところを最善とするように振る舞うことが親に求められることです。

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