中学受験がピークを迎える。思うような結果が出なかったとき、親はどうしたらいいのか。中高一貫の男子校と女子校で長年の教育経験を持つ開成中学校・高等学校校長の柳沢幸雄さんと鴎友学園女子中学高等学校名誉校長の吉野明さんが語り合ったAERA 2020年2月3日号の記事を紹介する。
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──中学受験がピークを迎えます。結果が思うように出なかった子どもに親はどんな言葉をかけ、どう接したらいいでしょうか。
柳沢:まず覚えておいてもらいたいのは、中学受験というのは第1志望に合格しない割合が非常に高い、ということです。ほとんどの子が第1志望に落ちるんですよ。
吉野:「第1志望に受かった」という子の中にも、願書提出の前に志望校を変えている場合がありますからね。表面上第1志望に受かっていたとしても、その子の中にわだかまりがあることもあります。親がそのわだかまりをわかっておくだけでも、気持ちの持ちようが変わってきますよね。
柳沢:受験生に私が伝えているのは、受験というのは「椅子取りゲーム」だ、ということです。開成の場合、中学受験なら椅子は300。それに早く座れれば合格するし、遅れれば落ちる。そういう意味では、椅子取りゲームは生きているうえで何回もあるんです。
吉野:中学受験は特に、椅子が非常に少ないゲームということですね。
柳沢:椅子取りゲームのない世界はいいかもしれない。実は日本人はそれを経験しているんですよ。それは江戸時代。「士農工商」で職業が決まっていましたから。
吉野:生まれたときから椅子が決まっているということですね。
柳沢:子どもたちに「どっちがいいの?」と聞くと、「椅子取りゲームがあっても、自分がやりたいことをやりたい」と言います。そうなると、自分がやりたいことと同じことをやりたい人がいれば、椅子取りゲームが厳しくなる。ただ、椅子取りゲームは人生で1回だけじゃありませんから。1回失敗したら、次に頑張ればいいんです。だから親子ともに、そんなにがっかりすることはないんですよ。