大学入学共通テストの実施まで1年を切った。昨年、目玉とされてきた「英語民間試験」と「国語・数学の記述式問題」の導入が見送られたが、共通テストはどうあるべきなのか。AERA2020年2月3日号で、「テスト理論」「英語スピーキング」「国語教育」のそれぞれ第一人者である、東京大学名誉教授の南風原朝和さん、京都工芸繊維大学教授の羽藤由美さん、日本大学教授の紅野謙介さんが意見を交わした。
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1月18、19日に大学入試センター試験が終わり、来年から大学入学共通テストに切り替わる予定だ。しかし昨年、「英語民間試験」と「国語・数学の記述式問題」という二枚看板の導入延期が土壇場で決まった混乱は収まらない。「記述式問題」がなくなった後の国語や数学の出題内容はどうなるのか。1月中に発表される予定だが、実施まですでに1年を切っている。
1月20日には「入試改革を考える会」が、「来年度の共通テストの実施延期とセンター試験の継続」を求める署名を文部科学省に提出した。見送り後の変更を反映させたプレテストの実施が不可能だからだ。
受験シーズンに入った高校3年生は、27日から国立大学の2次試験の出願が始まる。「来年の共通テストがどのような内容になるのかわからないなか、出願の判断ができない」といった怒りの声も上がる。
──共通テスト実施まで1年を切りましたが、混乱が収まりません。
南風原:来年の共通テストをどうするかは、喫緊(きっきん)の課題です。
紅野:プレテストがもうできないのですから、私は来年は、センター試験を継続すべきだと思います。
南風原:前提としていた大きな柱が抜けたのですから、本来、試験設計のし直しが必要です。
──英語は、民間試験で4技能を測ることを前提に、共通テストは「読む」「聞く」の2技能に特化した問題構成や配点になっていますが、導入見送り後も、その方針に「変更はない」と発表されています。
紅野:骨組みを変えずに残しておき、民間試験を復活できるようにしておきたい、という意図を感じずにはいられません。
南風原:大学入試センターは、こんな大事な決定を「書面審議」ですませています。その会議のメンバーは非公表です。
羽藤:英語についてはセンター試験が万全だったとは思いません。しかし変更点について受験生や教員が納得していないいまの状況は問題です。理解を得るための丁寧な説明が必要です。