ちなみにこのモンゴルダービー、騎手は1000キロを乗りっぱなしだが馬は各所のホースステーションで乗り換えとなる。つまり優勝を競うのは馬ではなく人だけだというところも、一般的な競馬場で行われるレースとは一線を画している。なお2019年の第10回大会では米国出身の70歳、ボブ・ロング騎手が優勝し、鉄人として歴史に名を残した。
●一風変わったユニークなレースたち
冒頭でばんえい競馬が唯一無二と書いたが、曳くのが重たいそりではなく馬車というレースならば実は世界各国で行われている。ハーネスレースやトロットレースと呼ばれるものだ。
馬車といっても屋根付きの大きなものではなく、競技用車いすに似た二輪のものを使用するのが一般的。騎手は「ジョッキー」ではなく「ドライバー」と呼ばれる。かつては日本でも繋駕速歩競走として行われていたが、現在では実施されていない。
このレースで変わっているのは、馬は一般的な競馬のように全力で走ってはならず、各国によってルール適用に差はあるものの、四本の脚のいずれかが地面についていなければならないとされている。こうした走り方を「速足(トロット)」という。人間のレースでいえば地面から両足が離れてはいけない競歩のルールに近いかもしれない。
競馬場でサラブレッドが走る一般的な競争にも、出走基準がユニークなことで知られるレースがある。コアな競馬ファンにはおなじみの、毎年12月に川崎競馬場で行われる「ホワイトクリスマス賞」は世界でも珍しい芦毛・白毛の馬しか出られないレース。最近では誘導馬たちがトナカイにコスプレし、サンタ衣装を着た乗り手とともにレースを盛り上げていることでも知られている。
ちなみに川崎競馬場では、正月に栗毛馬・栃栗毛馬限定で行われる「ゴールデンホース賞」、初夏に黒鹿毛・青鹿毛・青毛による「くろうま賞」も実施されている。日差しを浴びて美しく輝く栗毛馬や、汗が黒光りして凛々しい黒毛馬たちによる競争は見ごたえ十分だ。