競馬と聞いて多くの人々がイメージするのは、サラブレッドたちが平地のコースで争うものだろう。だが日本にも巨漢のばん馬が鉄製のそりを引いて2つの障害を越えて競うという世界にも類のない「ばんえい競馬」が存在するように、世界には風変わりな名物レースがいくつもある。今回はそれらを紹介していこう。
●世界有数の過酷なレースたち
ばんえい競馬も過酷だが、世界の競馬ファンが「過酷なレース」で真っ先に思い浮かべるのはやはり英国障害競走の粋ともされるグランドナショナルだろう。
リバプールのエイントリー競馬場で毎年4月に行われるグランドナショナルは、約7000メートル弱のコースで30回の障害飛越を要求される。当然ながら完走するだけでも困難なレースであり、毎年40頭近い出走馬を集めながら完走馬は一桁ということも珍しくない。
厳密にはグランドナショナルは英国障害競走の最高峰レースではない。格付けはG3で、直前の3月にはチェルトナム・フェスティバルと呼ばれる障害競走の祭典で多くのG1が行われている。それでもグランドナショナルを勝つことは最高の栄誉とされ、完走するだけでも讃えられる名誉あるレースであることは間違いない。
だが世界にはこのグランドナショナルに勝るとも劣らない過酷で型破りなレースも存在する。それがモンゴルダービーだ。
2009年から始まったこのレースは、モンゴルの大草原に設定された1000キロのコースを1週間から10日間ほどかけて完走を目指すというもの。「世界の最長距離競馬」としてギネス認定もされている。
参加者は水や食料はもちろん、規定の宿泊場所に到着できない時のために寝袋やトイレットペーパーまで持参してレースに臨むというから、もはやちょっとした冒険だ。分かる人にはジョジョ第六部のスティールボールランを想像してもらえればイメージしやすいかもしれない(もちろん現実のモンゴルダービーに妨害行為はないが……)。