内進生と高入生の大学実績にも差が出ている。都が指定している難関国立大学等(東京大、一橋大、東京工業大、京都大、国公立大医学部)の進学実績は、17年調査で併設型の内進生7.6%に対し、高入生は0.8%にとどまった。各校では取り出し授業や補習を行ったりしているものの、思うような成果は得られていないようだ。
高校募集をやめることは、学校にもメリットがある。カリキュラムを一本化できる点だ。公立一貫校はある程度の先取り授業を認められているが、高校から入学する生徒がいると思い切ったカリキュラムを組むことができない。また探究や総合的な学習は時間がかかるため、6年間という時間が武器になる。
高校募集を停止し中学の募集枠を広げる公立の攻めに、私立は危機感を募らせる。東京私立中学高等学校協会の近藤彰郎会長はこう話す。
「もちろん影響はある。ただ、中高一貫教育は私立が先鞭をつけて進めてきた。その成果を見て公立もまねをしているが、私立のように建学の精神はなく大学実績を上げるために6年一貫化しているにすぎない。ただし学費の差は大きい。公立が中高一貫校を作るならば私学にも補助金を増やし、同じ土俵で勝負すべきではないか」
私立の困惑を尻目に、21年度は埼玉に、新校舎に総工費140億円をかけたといわれる川口市立高等学校附属中学校が誕生する。公立中高一貫校は拡大の一途をたどっている。(ライター・柿崎明子)
※AERA 2020年1月27日号より抜粋
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