一方の後者はいきなり始められるわけではなく、ひとつの企業や業界で実績を積んで信頼を得てから、勤務先と相談してリモートワークを取り入れたり、転職でリモートワークができる会社に移ったりといったキャリアパスをたどる人が多いです。日本でリモートワークというと、こちらの働き方を指すことが多いかもしれません。
「6週間育休を取得し、復帰後は週3回家から働いている」という女性、「子どもと過ごす時間が少ないことが気になり、リモートワークを導入している会社に転職した」男性、「保育園のお迎えに間に合うよう3時までは会社で働き、残りは持ち帰って家で働く」女性──。完全リモートから部分的に取り入れる人までさまざまで、職種もエンジニアから人事、法務、PRなどと多様です。案外どんな仕事も、会社に張り付いていなくてもできちゃうものなんですね。
普段からリモートワークをしていれば、緊急時も柔軟に対応することができます。「子どもが突然熱を出したから今日は自宅から働きます」とか、「大雪で車が動かないし子どもの学校も始業時間が遅れているので、午前の会議は家から参加します」とか。子持ち社員は子どもの病気などで突然休むから重要なポストを任せられない……なんて話もありますが、それなら家から働けるように職場の仕組みを変えればいいんですよね。
業界や職種にかかわらず、リモートを選んだ人はのびのび働いている印象です。もちろん各々面倒なことや葛藤はあるでしょうが、前者を選んだ人からも「お給料は減ったけど育児中もキャリアが途切れないからよかった」「親と職業人、2つの顔を持つと精神バランスが保てる」という声を聞きます。昨今のアメリカ、特に若者や子育て現役世代の間では、仕事を選ぶ際に給与や福利厚生よりも職場のフレキシビリティー(柔軟性)のほうが重視されるようになっているそうです。
日本、特に東京では、東京オリンピック期間中の混雑緩和のためにリモートワークが推奨されているんですよね。テレビ会議を増やしたりシェアオフィスを導入したりという話もよく耳にするようになりました。クラウドソーシングサービスや社内フリーランス的な選択肢も増え、わたしたちの働き方は少し前の時代と比べると格段に柔軟になっています。このままさらに柔軟性が高まれば、平日の公園で子どもと戯れる親(特にお父さん!)をたくさん見かける日が来るかもしれません。
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◯大井美紗子
おおい・みさこ/アメリカ在住ライター。1986年長野県生まれ。海外書き人クラブ会員。大阪大学文学部卒業後、出版社で育児書の編集者を務める。渡米を機に独立し、日経DUALやサライ.jp、ジュニアエラなどでアメリカの生活文化に関する記事を執筆している。2016年に第1子を日本で、19年に第2子をアメリカで出産。ツイッター:@misakohi