48時間熟成で旨みが増した熟成まぐろのお寿司
48時間熟成で旨みが増した熟成まぐろのお寿司

 以前このコラムでも書きましたが、いま世の中は熟成ブームです。熟成肉をうたうお店が街にあふれ、熟成まぐろをはじめとする熟成魚も人気を集めています。

 熟成した食品って、しっとりとした舌ざわりで、なんとも言えない旨みが口の中にじゅわ~っと広がっておいしいですよね。

 東京大学の眞鍋昇先生(日本食品科学研究所・ 東京大学名誉教授・大阪国際大学教授学長補佐)によると、我々人類は遺伝子レベルで、熟成した食品をおいしいと感じるようになっているというのです。一体どういうことなのでしょうか。

 猿人類よりもっと昔、まだ恐竜が闊歩していた時代、我々の祖先にあたる哺乳類は小さく弱い存在でした。

 その時代の覇者は、ティラノサウルスに代表される肉食恐竜たち。彼らの餌にされないよう、哺乳類は昼間は物陰に隠れ、夜になると肉食恐竜たちが食べ残した肉の残りなどをあさって食べていたようです。

 食べ残しの肉ですから、当然新鮮ではなく、中には、多少傷んでいたものもあったことでしょう。でも、そうした肉も食べなければ生きていけないということで、次第に多少問題のある肉でも消化できるように進化していったと考えられます。

 実は腐敗と熟成はどちらもたんぱく質がアミノ酸などに分解されるという点では同じような作用です。

 大きく違うのは、人体に有害な細菌が繁殖しているかどうかです。

 現代において、熟成の作業は、温度や湿度、時間、衛生状態などの熟成環境を厳しく管理することで、人体に有害な細菌の繁殖を抑えて、たんぱく質の分解により旨み成分を増加させています。だから安心して熟成肉や熟成魚を食べられるんです。

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岡本浩之

岡本浩之

おかもと・ひろゆき/1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、2018年12月から「くら寿司株式会社」広報担当、2021年1月から取締役 広報宣伝IR本部 本部長。

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