手放しで喜ぶだけではない。
「自分のなかでは4回転ループをきれいに決めたかったという気持ちがあったので。そこに関しては、少し不満があります。このプログラム(フリー)に関しては、まだ(完成度が)30%とか20%だと思っています。やっぱり、最終的にはこのプログラムに4回転アクセルを入れたいなって思っていますし、もしかしたら(4回転)ルッツを入れたいって思うかもしれないですし。それはまだわからないですけど、せっかくこういう演技ができるようになっているからこそ、より高いものを目指していきたいなと思っています」
今、羽生は壁を感じている。
「越えるべきものは近くはなっているのかなとは思うんですけど。なんて言えばいいのかな。なにか自分も大人になったんだなという感じなんですかね。すごく感情だけで動いてきた昔とは違って、ある程度おさえてキープして、よい感じにピークをもっていかないとダメだなという壁があって、それを越えたいっていう自分がいます。どれくらいの高さなのかはちょっとまだわかんないんですけど、ちょっとずつ頂上が見えてきているのかなとは思っています」
自分らしく滑る。それは妥協せずに自分と戦い続けることでもある。他者に勝つより難しく、逃げ道や近道はない。
「これからまた自信をもって、『自分は羽生結弦なんだ』って言い聞かせながら練習したい」
孤高の王者は道なき道を切り開き続ける。(朝日新聞スポーツ部・大西史恭)
※AERA 2019年11月11日号