「率直に言って驚きですね。でも、悪い気はしないです。うぬぼれでもなんでもなく、山根明という人間を評価していただいている。ジョークの一つとして『山根会長に言いつけるぞ』とか使われるのは、光栄です」
と、心の広さを見せた山根会長。だが、話は止まらなくなり、隠語をつけられた上司へのアドバイスも。
「部下にも何か思いがあって、山根明の名前を隠語で出している。何を考えてそう呼んでいるのか、自分のお金で個人的に誘って会話をしてみるといい。部下が考えていることがわかるはずです」
前出の内藤さんによれば、隠語が生まれやすいのは「腹を割って話しづらい職場」だという。だからこそ、古き良き山根流の「上司と部下」の関係性は、ある意味、健全といえるのかもしれない。
■チャットが隠語を助長
一方で、テクノロジーの発達も隠語を促進する。
業務の効率化を図るべく、近年オフィスでも導入するケースが増えたチャットツールも、隠語の使用を加速させる可能性があるという。
「文字は短縮したほうが打ちやすく、コストカットにもなります。チャットツールなどでは隠語や略語が生まれやすいという下地はあります」(内藤さん)
リスクもある。
たとえば、メールやチャットツールでの隠語使用では、送信相手を間違える「誤送信」に気を付けたい。親密度が高まっても、職場環境が崩壊しては元も子もない。さらに、内藤さんは続ける。
「社内で一緒に動いているチームの6割ほどが隠語を理解し始めると、バレるリスクが高まります。とはいえ、それだけ知れ渡る頃には、すでに新しい隠語が生まれているでしょう」
上司が気づくころには、他の言われ方をされていると思っていたほうが良さそうだ。(編集部・福井しほ)
※AERA 2019年10月7日号