

ストレスコントロール法「マインドフルネス」が、集中力の向上をはじめ、うつや不安症状などの治療に活用されるなど注目を集めている。AERA 2019年10月7日号に掲載された記事を紹介する。
【図表で見る】血糖値の急上昇でパフォーマンスはこんなにも下がる
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瞑想やヨガの手法を応用したストレスコントロール法の「マインドフルネス」には、食べることを通じて集中力を磨くトレーニングがある。代表的なセッションの一つが、「レーズンエクササイズ」だ。
用意するのはレーズン1粒。まずは目で見て、じっくりと観察し、匂いを嗅いでみる。指でトントンと叩いて音を聞いたり、感触も確かめたりする。そしてゆっくり口に含み、噛まずに舌の上で転がす。ゆっくり噛み、味を感じ、噛みながらその変化を味わう。それからのみ込み、のどから食道、胃へと移動する感覚を感じる。
慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室専任講師の佐渡充洋医師はこう話す。
「人は落ち込んでいる時は過去に注意が向いて後悔し、不安を感じる時は未来に注意が向き、先のことを心配する。その結果、集中力が低下し、さらにストレスが膨らみます。『今、ここ』に集中するトレーニングを重ねることで、より冷静にさまざまな状況に対処できるようになります」
マインドフルネスはうつや不安症状などの治療に活用されているほか、Googleやインテルといった世界的な企業で社員研修に導入されるなど、注目を集めている。
レーズンで練習した後は、普段の食事にも取り入れたい。野菜や肉、魚の彩り、手や箸でつまんだ感触、匂い、舌触り、噛みごこち、口の中でどのような味わいが広がっていくのか……。いつもなら何げなくかきこんでいる食事を、五感をフル活用してしっかり味わってみるのだ。
「ただし『使われている野菜はどこで作られたのだろうか』などと食事から何かを連想したり、思いを巡らせたりするのではなく、食べるという行為から得られる直接的な体験をそのまま観察することが大事です」(佐渡医師)
毎食は難しくても、朝食だけ、休日の食事だけなど決めて練習したい。日々の仕事にも集中できるようになる上、早食いや食べ過ぎも防ぐことができる。
(ライター・熊谷わこ)
※AERA 2019年10月7日号