日本に住んでいたとき、ズボラなわたしはいつも母子手帳の置き場所を忘れ、検診に出かけるたび「あれ、母子手帳どこやったっけ?」と焦って探していました。また「母子手帳は子どもが成人するまで大切に取っておかなければならない」というプレッシャーがものすごく、いつか紛失してしまうのではないかと不安でたまりませんでした。

 アメリカでは、その焦りやプレッシャーから解放されました。検診・予防接種は、手ぶらでオッケー。記録は小児科でプリントアウトしてもらえます。その用紙を受け取って、家で保管しておけばいいだけ。万が一用紙をなくしても、次の検診でまた新たな用紙をプリントアウトしてもらえます。予防接種の記録は、保健所でもプリントアウトしてもらえます。「データにバックアップがある」「データの管理者をアウトソーシングできる」ことで、これほど解放感が生まれるとは思ってもみませんでした。

 日本の母子手帳には、身長・体重や予防接種の記録以外にも、身体能力やことば、離乳食などの進み具合を記録する欄があり、とても便利です。ただ、「現状ではデータが紙の手帳一冊にしか残されていない(あるいは完全アプリされたら、アプリでしか見られない)」「データを管理するのは親のみ(というか母親のみ)」では、窮屈なままではないかと思います。せめてお医者さんか行政かでデータを共有してもらえたら、親はだいぶ楽になりますよね。親というか、母親だと何度でも強調したい。だって名称が「母子手帳」なんですから。

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◯大井美紗子
おおい・みさこ/アメリカ在住ライター。1986年長野県生まれ。海外書き人クラブ会員。大阪大学文学部卒業後、出版社で育児書の編集者を務める。渡米を機に独立し、日経DUALやサライ.jp、ジュニアエラなどでアメリカの生活文化に関する記事を執筆している。2016年に第1子を日本で、19年に第2子をアメリカで出産。ツイッター:@misakohi

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