在宅で親を介護する生活が3年、4年と続くうちに、親の体力・知力・精神力は徐々に衰えて、いよいよ施設入居を考える時期が近づいてきました。いまが入居のタイミングなのか、だれもが迷うもの。ご近所に大きな迷惑をかけたなど、社会的なきっかけがあると、かえって決心はつきやすいそうです。また、親の「耐えられない行為」があるときも、入居を決めやすいとか。いったいどのような行為なのでしょうか。介護アドバイザーの高口光子さんにお話をうかがいました。
【図表】実家の片付けがうまく進まなくなる。親に言ってはいけない13のNGワード
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■親の失敗についての許容度は人それぞれ
一人暮らしの老いた親の施設入居を考えるきっかけとして、たとえば火やごみの不始末、認知症であちこち出歩いて迷子になる、夜中に大声で叫ぶなど、隣近所への迷惑=社会的な迷惑行為が挙げられます。もう一つは家の中で転んで起き上がれない、食事ができずに数日たっていたなど、親自身の健康維持にかかわる出来事です。
このようなアクシデントのとらえ方は家族によって異なります。
ごみが2週間たまっただけで「もうダメ」となる家族もいれば、ごみ屋敷に近くなってようやく限界かなと感じる家族もいます。認知症の親に「お前は泥棒だろう」と言われて「そんな言葉を浴びせられるのは耐えられない」とすぐに施設入居を考える家族もいれば、認知症という病気なんだから言われても平気、と思える家族もいます。
いわば許容範囲の幅のせまさ/広さがあるのです。
施設を見学に来られたいろいろなご家族と面談しているうちに、この幅には、それまでの親子関係が影響していると思うようになりました。親が支配的であった家族では、子(親を施設に入れようと検討している本人)の許容の幅はせまく、「きちんとしていたおとうさん(おかあさん)がこんなになるなんて耐えられない」「これまで言われた通りにやってきたのに、泥棒よばわりされるなんて、我慢できない」と、早い時期に施設入居を決定します。一方、親は親、子は子と、それぞれの自立性を重んじてきた親子では、「思うようにさせてもらったから、おとうさん(おかあさん)の意見を尊重します」と、認知症の有無にかかわらず親が在宅を望めば、施設入居を延期することが多いようです。