まったく運動してこなかったぶん最初はきつかったが、そのかいあって2カ月後には体重が3キロ減って全体が引き締まり、ワイシャツの上からでもわかるほどに。その後は自宅でできるトレーニングを続けた。12月に再度模擬面接を受けたところ、カウンセラーから「だいぶ印象が変わったね。この調子なら大丈夫」とお墨付きをもらうことができたという。
「翌年受けた公務員試験のほとんどに最終合格しました。見た目が変わったことはもちろんですが、自信が持てるようになったことで立ち振る舞いにも変化が出たのだと思います。ごく自然に体重が減り、今はベストの61キロで、体調もいい。職場で彼女もできました。以前のぽちゃぽちゃの私を知らない同僚からは『藤谷君は筋肉質でスポーツできそうだね』と言われます。全然できないんですけど(笑)」
さらに藤谷さんは、筋トレによる想定外の効用として「姿勢が良くなったこと」を挙げた。
「僕は昔から猫背で、背中の真ん中あたりを椅子の背もたれに付けて頭だけ前に出すというスタイルだったんです。でも筋トレをやるようになってから、背もたれなしで座ることが苦でなくなりました。就活でも、かなりプラスになったと思います」
実は、姿勢と筋肉には、深い関係がある。
「いわゆる『いい姿勢』を保つには、自分の身体を地球に対して垂直に保つ『筋力』と『バランス感覚』が必要です。ところが現代人は筋力が衰えていて、5分も保っていられない人がとても多い」
そう話すのは、虎ノ門カイロプラクティック院院長の碓田拓磨さんだ。碓田さんはとくに、座り姿勢に注目する。
「人は、立っている時より座っている時の方が、背中が丸まりやすくなり、体を垂直に保つことが難しい。座り姿勢は、骨盤の角度で決まります。鍵を握るのは、腸腰筋(大腰筋と腸骨筋)、大腿四頭筋、大殿筋、ハムストリングの四つです」
腰の後ろに手を回し、背筋のすぐ横の筋肉を強く押してみてほしい。そのままやや上を見るようにゆっくり上体を前傾させる。そこから上体を戻していくときに、硬く張っていた筋肉が、ふっと軟らかくなる瞬間がある。この指で触って軟らかいと感じる状態こそが、正しい座り姿勢の位置なのだと碓田さんは言う。