大谷翔平(中央)のもとに駆け寄る日本代表の選手たち(写真:AP/アフロ)
大谷翔平(中央)のもとに駆け寄る日本代表の選手たち(写真:AP/アフロ)

 第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の決勝は侍ジャパンがアメリカを3対2で下して3大会ぶり、3度目の優勝を果たした。試合の最後は最終回から登板した大谷翔平(エンゼルス)がチームの同僚でアメリカ代表のキャプテンであるトラウト(エンゼルス)から三振を奪うという劇的なものであり、まるで漫画のような結末だった。過去2度の優勝は途中で敗戦もあったが、今回は7戦全勝という文字通り完全優勝であり、改めて日本野球の強さを世界に見せつけたのは間違いない。

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 その最大の要因はやはり安定した投手陣ではないだろうか。準決勝のメキシコ戦こそ5点を奪われたものの、それ以外の試合は全て自責点3以内に抑え込んでおり(1次ラウンドの韓国戦は4失点も自責点3)、決勝のアメリカ戦でも強力打線を相手にソロホームラン2本の2失点でまとめている。球数制限もある中で他のチームが投手陣のやりくりに苦労する中で、大崩れする投手がいなかったというのは見事という他ない。

 そんな投手陣について改めて感じたのが層の厚さである。前回のWBCでエース格だった菅野智之(巨人)は近年NPBでも苦戦が目立ち招集されず、同じくエース格だった千賀滉大(メッツ)もメジャー移籍により不参加。また若手でも一昨年の東京五輪でリリーフとして出場した平良海馬(西武)も先発転向を理由に招集されていない。

 さらに大会開幕後には抑え候補だった栗林良吏(広島)も腰の異常を訴えて離脱。またダルビッシュ有(パドレス)も調子がなかなか上がらずに大会防御率は6.00に終わっている。これだけマイナス要因が重なれば投手陣が崩壊してもおかしくないものだが、チーム防御率(2.29)は圧倒的にトップの数字をマークしたのだ(2位のドミニカ共和国は2.73)。そして、その立役者となったのが経験の浅い若手投手たちである。

 準決勝の先発を任された佐々木朗希(ロッテ)はその実力と存在感からすっかり主戦となったが、今年でまだプロ入り4年目であり一度も規定投球回数に到達したことはない。また決勝戦で登板した戸郷翔征(巨人)、高橋宏斗(中日)、伊藤大海(日本ハム)、大勢(巨人)という面々もチームではまだまだ若手の部類に入る選手である。実績のある投手が故障やあらゆる事情で抜けても次から次へと力のある若手投手が登場し、国際舞台でも力を発揮できるというのはもはや日本野球の伝統と言ってもいいだろう

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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やっぱり大きかった大谷翔平の存在