そしてやはり大きかったのは大谷の存在だ。投手として2勝、1セーブをマークし、野手としても打率.435、1本塁打を含む長打5本、8打点の活躍で見事に大会MVPにも輝いたが、その数字以上にチームに与えたプラスは大きかった印象を受けた。
打者としての長打力はメジャーでも屈指であり、相手チームのバッテリーが明らかに大谷に対する攻めに苦労している様子が度々見られた。第1回、第2回に連覇した時もイチロー(当時マリナーズ)の存在感は大きかったが、相手に畏怖の念を与えていたという点では大谷の方が上回っていたことは間違いないだろう。メジャーでもプレーする名だたる選手が、大谷に対しては明らかに“格が違う”選手として対しており、そんな存在がチームメイトとしているということが他の選手たちに与えた安心感は計り知れないものがあったはずだ。
また準々決勝のオーストラリア戦では投げる度に雄たけびをあげ、準決勝のメキシコ戦の9回では先頭打者でツーベースとして出塁してベンチを鼓舞するポーズを見せるなど、プレーだけでなく姿勢でもチームを牽引し続けていた。アメリカのメディアでも大谷を“完璧な野球兵器”と評していたが、改めて世界で唯一無二の選手だと感じたファンも多かったことだろう。
これで日本代表は2019年のプレミア12、2021年の東京五輪に続いて国際大会3連覇を成し遂げたこととなったが、その背景には代表チームを“侍ジャパン”という名称で統一し、育成年代から日本代表で戦うことの重みづけを行ってきたことも大きかったのではないだろうか。今回の代表チーム、そして大谷の活躍によって代表を目指す野球少年が増えることも期待できるはずだ。近い将来、大谷に続く世界一の選手がまた日本から現れ、世界を席巻するプレーを見せてくれることを期待したい。(文・西尾典文)
●プロフィール
西尾典文 1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。