コンプライアンス研修や実際の事例の共有など教育も重要だが、従業員が会社にものを言いやすくする環境作りが必要だ。
「相談できない、あるいは相談しても『数字が足りないんだからガンガン行けよ』と言われるような職場だと、自分が黙ってさえいれば大丈夫だろうと考え反社との接点を持ってしまいます。現場が防波堤になるかどうかの境目はそこにあります」(同)
不当要求に応じた場合、必ず2回目の要求がある。そこで現場の人間を矢面に立たせるのではなく、「会社として対応する」と普段から徹底しておかないと、従業員は隠してしまう。
「反社は不当要求をつけ、対応の甘い会社を見極めています。そして脇の甘い会社があったら一気に攻めてきます」(同)
一連の報道で反社リスクに関心が高まっている今が、膿を出し切るチャンスだとも言う。
「研修の実施や、反社の問題はきちんと対応するので情報を上げてくれと従業員に呼びかけてほしい。『いま言ってくれるならこれまでの問題は問わない』など会社の強い意志を示す形で情報を上げやすくする方法もあります」(同)
東京都暴力団排除条例の一部が改正され、10月1日から施行される。都内の主要な繁華街で、用心棒料などの授受を禁止する措置を追加した。現行では払った店側を罰するには「勧告」「公表」「命令」の3段階の手続きを踏む必要があるが、改正後は即座に罰則(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)の対象となる。東京弁護士会民事介入暴力対策特別委員会委員長の齋藤理英弁護士はこう言う。
「みかじめ料は払った方も条例違反になりますが、断れない場合もある。『罰せられるから払えません』と断れるようにと警察側は考えています」
(編集部・小柳暁子)
※AERA 2019年8月12日号-19日合併号より抜粋