吉本興業所属芸人の“闇営業”問題で浮き彫りになった「反社会的勢力」という存在。芸能界だけでなく一般社会でも、手口が巧妙化する「反社」への対応が必要だ。
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芸人の宮迫博之さんらが反社会的勢力の会合に出席し金銭を受け取っていた問題。宮迫さんらは反社だと気付かなかったという。1992年施行の暴力団対策法以降、伝統的な資金獲得活動が難しくなり、反社の実態はより複雑化し、手口が巧妙化している。この問題に詳しいノンフィクションライターの小野登志郎さんはこう言う。
「彼らは見た目ではほとんど見分けがつきません。警察や専門家でも見分けるのは難しいです」
企業のクライシス・リスクマネジメントを専門的に手掛けるエス・ピー・ネットワーク副社長(主席研究員)の芳賀恒人さんは言う。
「みかじめ料や薬物といった伝統的資金獲得活動もありますが、いまは会社形態でビジネスを介して関係を持とうとするケースが一番多いです」
取引先については、新規上場や合併といった重要なイベントのときは確実に反社チェックの必要があるが、通常でも定期的なチェックが必要だという。
「経営者や資本が変わったり、不自然な役員人事があったり、筋のよくない株主に支配されたり、社名は同じでも実態が変わるケースがあります」(芳賀さん)
反社チェックの手法としては、反社会的勢力データベースのスクリーニング、インターネット検索などを利用した風評検索、新聞記事検索が主に使われており、エス・ピー・ネットワークではこの三つを連動させて検索できる日本最大級の反社会的勢力データベースプラットフォーム「エスピーリスクサーチ」を提供している。
未然に防ぐことができればいいが、反社も巧妙に姿を隠しており、現場でさまざまな取引先などと接する従業員はいつ反社と接点を持ってしまうかわからない。従業員がおかしいと思った時点で会社に報告できるかどうかが社の明暗を分ける。
「個人レベルで怪しいと思ったが、上司に言えずにずるずる関係を持ってしまったというケースが一番多い。最前線にいる従業員は会社にとって防波堤にもなるし、反社を招き入れる接点にもなる。従業員に暴排意識、リスクセンスを持たせることが一番重要です」(同)