松原高校は1学年約200人。7割程度が大学・短大進学を希望する。しかし、特に一般受験で苦戦する生徒も多く、現役進学率は5割台半ばの年が多い。同校の造作(ぞうさく)聡美校長は言う。
「私立大学の定員厳格化の流れもあって、これまで通りのやり方では一般受験で進学を目指す生徒への指導が行き届きません。そこに進学アシスト校事業の話があり、手を挙げました」
都がこの事業の入札にあたって定めた仕様書には、講師の要件としてこんな文言がある。
「大学受験予備校等で、高校生を対象とした大学受験指導の経験が2年以上あり、国公立大学や日東駒専クラス以上の私立大学へ合格させる等の実績を有していること」
都も学校も数字や大学名の目標を明示はしていないが、これらの実績に応じた成果を期待しているということだろう。
この日の授業を受講していた男子生徒(18)は、他の塾には通っていない。今回の授業に手ごたえを感じるという。
「この講座は家での自習も必要になるので、解く問題数がグッと増えました。“解き方”がだんだんわかってきた気がします」
「学力格差は経済格差」と言われる。一般的に、予備校で受験対策講座を受講すると、90分10回ほどの単科講座で4万円程度かかる場合が多い。経済的理由だけではないが、塾に通える生徒ばかりではなく“教育機会格差”が生まれている。それが、この事業では、学費負担ゼロで「受験のプロ」の授業が受けられる。これまで意欲があっても受験勉強のチャンスが得られなかった生徒たちに対し、救済策にもなるかもしれない。
2校での事業は現在の1年生が卒業するまでの3年間続く。都はその間に成果を見極め、今後事業を続けるか、また対象を拡大していくか、検討する方針だ。(編集部・川口穣)
※AERA 2019年7月22日号