左ページには、本から三つのレシピを紹介した。「赤キャベツの白和え」は伊藤さんが料理家の友達に習ったもの。ちょっと花椒を入れるとピリッとしたアクセントになるという。「きゅうりの炒めもの」は、きゅうりって炒めてもおいしいと伝えたかったとか。「しじみのにゅうめん」は、食欲がない時にぴったりだ。
レシピはどれも簡単にできそうなものばかり。
「家庭料理って、細かくなくていいと思うんです。細かいと疲れちゃうじゃないですか。『あー、ゴマがなかった』とか、料理1年生だとすべてを揃えないといけないと思ってしまうけど、なければないでできるのが私たち世代。この本のレシピもアレンジして作っていただけたらと思っています」
中医学では「病は気から」という言葉がずっと言われてきた。現代医学でも、気持ちの持ちようが病気に影響を与えることがわかってきている。
「陳先生が対談中に何度も『気の持ちよう』っておっしゃっていました。そして先生自身が大らかでした。もちろん気の持ちようだけでは防げない病はあるけれど、やっぱり気持ちが大事で、大らかに過ごすことの大切さをすごく学びました」
伊藤さんが、日常で大切にしていることは、寝る前の習慣にもある。
<テレビやパソコン、携帯電話は、眠る2時間前から見ないようにする。ひとつひとつ明かりを消して、だんだんと部屋を暗くする(闇に少しずつ近づける、そんな感覚でしょうか)>
日本人の睡眠時間は、経済協力開発機構(OECD)の2018年発表の調査では、加盟国の中で最下位。仕事に家事に子育てをこなし、常に飛び交う情報をキャッチし続ける私たち。忙しくて睡眠不足は当たり前になっていないだろうか。
<中年期以降は、睡眠がいちばんです>
とは本の中の陳先生の発言だ。いつまでも大らかで健康にいられるように、自らの生活習慣を見直す必要がある。
「疲れもストレスもその日のうちに、それでも大変なときは1週間単位で、考えるといいのかなと思います。無理って続かないじゃないですか。この本をきっかけにちょっと考えてみよう、って思ってもらえたらうれしいですね」
(編集部・三島恵美子)
※AERA 2019年7月15日号