三つ目が、物価上昇目標2%をできるだけ早期に実現すると定めた、政府と日銀の共同声明の見直しです。ここで忘れてはならないのは、声明は日銀だけでなく、政府の責任も定めている点です。成長戦略を実現し、財政健全化を進める政府の約束が果たされているとは言い難い。このため、岸田首相はアベノミクスを総括できるかが問われることになります。
しかし、今の政治的な立ち位置をみると岸田首相には荷が重いように感じます。日銀もやるべきことは多い。というのも、そもそもインフレターゲットを決めるのは誰かという根源的な問題にまで踏み込まざるを得なくなるためです。日銀法にも明確な規定はありません。本来やるべき議論を尽くすなら、膨大なエネルギーが必要です。どこまで踏み込むかは政府にとっても日銀にとっても試金石となります。政策はその内容はもちろん、いつ、どう行うかも重要です。その点も、学者の世界とは異なるでしょう。
(本誌・池田正史)
※週刊朝日 2023年3月3日号