圧巻の演技で首位に立った宇野昌磨
圧巻の演技で首位に立った宇野昌磨
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 今シーズン負けなしの宇野昌磨(トヨタ自動車)が、底力を見せた。

【写真】演技後の宇野のこの笑顔!手ごたえを感じた?

 4年ぶり日本開催となるフィギュアスケート世界選手権(さいたまスーパーアリーナ)。23日夜には注目の男子シングルのショートプログラムが行われた。宇野にとっては7度目の出場。昨年は6度目の挑戦で悲願の優勝。連覇がかかる今年だが、囲み取材での「弱気な発言」や練習での転倒といったアクシデントもあり、心配された。しかしふたを開ければ、ショートプログラムで圧巻の演技。大会での宇野を追った。

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 21日午前の公式練習。フリーの曲かけの練習では、ジャンプのタイミングが合わずに途中で開く場面が目立ち、転倒も見られた宇野。曲の最後のポーズも決めずに、曲の流れにあわせずにジャンプを練習。曲かけの後は、失敗が多かったジャンプを繰り返し練習。どのジャンプもタイミングがあわない印象だ。とはいえ、成功したジャンプの質は高く美しい。トリプルアクセルは力まず自然に跳んでいた。その後スピンの練習をした。

 この後の囲み取材では、宇野からは「ひどい状況」と悲観するような発言も。たとえば、記者に「状態は?」と聞かれると、開口一番「今年一ひどい状況。先週からあまりにもひどくなりまして」と回答した。表情も心なしかさえない様子だった。

 さらに、連覇がかかった大会で、追われる立場の心境をたずねられると、「(それを)感じられるほどの調子があればよかったんですけど」「目の前のことに必死」「投げやりになってしまわないように最善を尽くしたうえでがんばりたい」などと、弱気な発言を連発。

 その後も「こういうできない時の僕をどういうふうにできるようにするかというのをちょっと興味本位で見て頂けたらな」と宇野独特の表現で気持ちを述べ、自身も“不調”をかなり気にしている様子だった(主なやりとりはこちらから)。

 ところが――。

 弱気発言のわずか6時間後の公式練習に現れた宇野は別人のようだった。フリーの曲かけ練習では、「G線上のアリア」の曲に沿った滑らかなスケーティングですべてのジャンプを美しく決めた。前半のジャンプは難なくクリア。流れのあるトリプルアクセル。全てのジャンプの着地はうっとりするほど美しく、プログラムは終わると観客から大きな拍手が上がった。一部の記者たちからは「(原稿)書き直しか?」の声が聞こえる。

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22日の公式練習でアクシデント