写真:西村尚己/アフロスポーツ
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 三原舞依が世界選手権に戻ってきた。

【写真】「ありがとうー!」ラブリーなハートマークで客席に応える三原

 勝負のフリープログラム。3月24日午後8時55分。

 滑り始める直前、氷の感触を確かめるように、リンクを大きく周回した。観客たちが固唾をのんで見守る。三原の動きにあわせて会場の観客の視線が一斉に動く。前に滑り終えたイザボー・レビトの得点待ちの時間のため、静まる観衆。

 レビトの得点(総合207.65点)が出ると、

「マイ、ミハラ」

 三原がコールされた。

 会場は割れんばかりの声援に包まれ、演技開始のポーズをとる三原の表情は、口角が上がり、落ち着いているようにも見える。そんな三原に、会場からは曲がかかる寸前まで声援が飛ぶ。

「マイちゃーん!」

 6年ぶりの世界選手権での演技だった。

 結果は、ショート3位。フリーは6位。総合得点205.70点。メダルも期待されたが、5位に終わった。得点源となるジャンプでミスがあり、点数を伸ばしきれなかった。それでも、会場を魅了し、演技後はスタンディングオベーションで、拍手が鳴りやまなかった。

 フリーの曲は「恋は魔術師」。演技はまるでバレエの舞台を見ているようだった。指先までしなやかに美しい動き。その動きに伴って深紅の衣装は炎が燃えているように揺れ、三原の表現する世界観に観客は引き込まれた。音楽が盛り上がると会場も熱を帯び、それを力にして滑っているようだった。

 演技後は、一瞬悔しそうな表情を見せた三原だったが、リンクを上がるときは観衆に向かって何度も何度も笑顔を見せた。

「一番上の座席まで見る」。これは毎回の三原の目標でもある。客席から「舞依ちゃんありがとうー!」と声が上がった。

 客席からだけでなく、直後ネットでも「心が浄化された」「また応援したくなった」「順位はどうあれ、すばらしかった」など賞賛の声があふれた。

 なぜ、これほどまでに三原は愛されるのか――。

 三原はいつも「感謝の思い」を口にする。

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