苦しい時期を経験した三原。それでも「自分を信じて」スケートを諦めなかった。

 

写真:西村尚己/アフロスポーツ
写真:西村尚己/アフロスポーツ

 トンネルを抜けたように今季は絶好調だった。出場した10の試合すべてで、表彰台に上がった。グランプリシリーズは2戦2勝。ファイナルでは坂本花織をおさえて初優勝。

 そして、17歳で出場した世界選手権に、23歳で戻ってきた。

「23年間生きてきた中で一番というか、ほんとに濃い一年だったなと思っています。ここまで帰ってこれたので、去年以上のどん底はほんとにずっともうないと思っています」(テレビのインタビューで)

 今季はカナダの名振付師、デイヴィッド・ウィルソンが振り付けた2つのプログラムで、挑んだ。大会前はプログラムのブラッシュアップもしてもらったという。

 三原自身も強い思い入れのあるショートプログラムは、三原のスケート人生を表現したものだ。曲は「戦場のメリークリスマス」。

「最初のポーズから最後のポーズまで一瞬一瞬を自分の人生を振り返りながら滑っています。一緒に今シーズン、何十試合も闘ってきたプログラムに感謝の思いを込めて、力強い部分は力強く、優しい部分は優しく、というコントラストをつけながら滑られたら」(ショートプログラム前の取材で)

 三原は今大会への思いも強かったが、スケートファンも同じ気持ちだったのだろう。ショートの演技では、中盤、客席から自然と手拍子が起き、最後までリンクは温かい空気に包まれた。

 ショートプログラムの演技後、三原はこう語った。

「今シーズンの中でびっくりするぐらい一番緊張して、最後まで滑れるか不安との戦いだったのですが、観客席の声援がすごくて、ぐん!って(背中を)押してくださって、お客さまに感謝しながら滑れたかな、と思います。ショートに今までの人生を込めて滑ってね、と言われた時から、何回も何回も滑ってきて。今日が一番心をマックスで込めきれたかな、と。最後すごいうるうるしながら感謝の思いがこめられたかな、と思います」

 

 リンクの上では、妖精のような三原、華やかさもある。透明感のある心が洗われるような滑りで見る者を魅了する。リンクから出れば一言ひとことを丁寧に、記者の目をしっかり見ながら誠実に対応する。気負わず、素直で。心根の優しさが伝わってくる。

暮らしとモノ班 for promotion
おうちで気楽にできる!50代からのゆる筋トレグッズ
次のページ
つぶやくように「かおちゃん、がんばれ。がんばれ」