ハワイと建築。一見結びつかないこの二つの関係を知るのが上級者の証し。観光ルートを一歩外れて、先人がこだわり抜いた建物を訪ねてみよう。知る人ぞ知る2人の人物の足跡を追ってオアフ島を回った。
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1人目は、建築家・ウラジミール・オシポフ。私たちがハワイに降り立つ最初の1歩となるホノルル国際空港(現在のダニエル・K・イノウエ空港)を手がけた人物だ。
1907年にロシア・ウラジオストクで生まれ、父が駐日帝政ロシア大使館付き武官だったことから、幼少期を日本で過ごした。20年代にアメリカに移住し、カリフォルニア大学バークリー校を卒業。その後ハワイに移住し、亡くなる98年までハワイを拠点に建築家として活動した。
ハワイアン・モダン建築を代表する建築家として、今でも注目されている彼の代表作が、ホノルルのランドマーク、IBMビルディングだ。1962年にIBMのために設計された建物で、蜂の巣のような外観はコンピューターのパンチカードを模したものと言われている。
IBM社はすでにこのビルからは撤退し、今ではこの地区の都市開発を手がける不動産ディベロッパーのハワード・ヒューズ社が入っている。昼の姿もいいが、夜になってライトアップされたビルもまた美しい。
乳がん啓発のピンクリボンキャンペーン中はピンク、というように日によって色が変わる。東京タワーや東京スカイツリーと同じ趣向だ。
IBMビルディングは有名でもあり、アラモアナの隣、ワードという中心エリアにあるので目にすることも多いだろう。もう一つ、ぜひ足を運びたいオシポフの代表作が、「リジェストランド・ハウス」だ。
山道を車で上っていった先に現れる、山の中の一軒家。
ハワード&ベティ・リジェストランド夫妻のために設計した住宅で、ハワイ大学のキャンパスなどがあるマノアという山間の住宅地にある。
ハワイモダン建築の最高傑作とも言われ、日本からも建築を学ぶ学生などが見学にやってくるそうだ。
迎えてくれるのは、幼少期をここで過ごした息子のボブ・リジェストランドさん(77)。現在は敷地内の別の建物に住む。