留学先では国際関係をテーマに人の安全保障を学んだ。授業で課せられたリーディングは毎週200ページ。図書館にこもり、辞書を片手に勉強した。国だけでなく、個人に焦点を当てた「安全保障」という概念に関心を持った。帰国後はGISで国際関係学のゼミを履修し、国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)を扱った授業で、アデレード大学での学びがぴたりと重なった。
「SDGsは貧困や飢餓の撲滅を目標に掲げていますが、これも個人を守る安全保障のひとつだと思いました」(同)
入学時、鳥塚さんの目標はCAだったが、留学をきっかけに進路が大きく変わり、現在は農業機械メーカーを志望している。機械化を進めて農作業を効率化すれば、より多くの人に食物が行き渡ると考えているからだ。
留学はグローバル人材の育成に欠かせないプログラムだ。前出の後藤さんは言う。
「留学を希望するなら、志望大学の協定校数や協定大学を調べておくべきです。交換留学には学費や手続きの負担が少ないというメリットがあり、法政大学のように奨学金制度が整っていれば、経済的な心配なしにチャンスを広げることができます」
英語力は留学に必須だが、鳥塚さんがそうだったように、進路を選ぶツールに過ぎない。(ライター・柿崎明子)
※AERA 2019年5月13日号より抜粋