桜鯛(写真/筆者提供)
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桜鯛のお寿司(写真/筆者提供)
岡本浩之(おかもと・ひろゆき)/1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、18年12月から「くらコーポレーション」広報担当

 日本が「漁業大国」と言われたのも今は昔。世界の漁獲量がこの30年間で約2倍に拡大した一方、日本の漁獲量は半減し、かつての世界1位(1984年)から世界8位にまで後退しています。

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 背景には若者の魚離れなどさまざまな要因があります。私は、子供の頃から瀬戸内のいろいろな魚に親しんできました。いまは、「くら寿司」を運営するくらコーポレーションの広報を担当していて、魚の魅力やお寿司の魅力を一人でも多くの方に知らせるのが仕事です。これから毎週、魚やお寿司にちょっと興味を持っていただけそうな話題を紹介していきたいと思います。

 さて、桜前線が徐々に北上し、そろそろ東北にかかってきました。毎年桜の時期になると、スーパーの店頭やお寿司屋さんで見かけるのが、「桜鯛」という魚です。多くの方は「桜鯛」という種類のタイがいると思われているかもしれませんが、実は国内で「桜鯛」と呼ばれているのは、皆さんよくご存じの真鯛です。

 「サクラダイ」という魚もいますが、大きくても20センチ程度と小さい魚で、ほとんど市場に出回ることがありません。せいぜいかまぼこの原料として使われている小魚で、皆さんが魚屋さんやお寿司屋さんで見かける「桜鯛」とはまったくの別物です。

 真鯛は春から初夏の産卵に備えて、3月はじめ頃から餌を活発に食べるようになり、3月末から4月にかけて産卵のために浅瀬に寄ってきます。このころの鯛は、非常に脂(人間でいうところの体脂肪でしょうか)がのってきて、身もプリップリでとても美味しくなるのです。ちょうど桜の花が咲く頃に美味しくなることと、繁殖をひかえた雌の魚体が婚姻色としてきれいなピンク色に染まることから、この季節に獲れる真鯛を桜鯛と呼び、新入学や旅立ちといったお祝いの席に縁起物としてよく使われているのです。

 また同じ桜鯛の中でも、2キロ未満の魚はまだ脂の乗りが悪く、逆に3キロ以上になると身に締まりがなくなってしまう(日々メタボを気にしている筆者としては、少々身につまされる話ですが……)ので、2キロから3キロのものが最も美味とされています。

 食べ方としては、もちろん塩焼きでも鯛飯でもおいしいのですが、やはりこの時期の脂の乗った「桜鯛」は、お寿司が一番ではないでしょうか。

 くら寿司では、この2キロから3キロの桜鯛を、口からあふれんばかりに通常の2倍の厚さで提供するフェアを4月末まで、全国のお店で実施しています。脂の乗ったプリップリの桜鯛、おいしいですよ!

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◯岡本浩之(おかもと・ひろゆき)
1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、18年12月から「くらコーポレーション」広報担当

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