こうしたリスクに加え、座り過ぎは運動器の故障も招く。同じ姿勢で座り続けると、骨や筋肉の一部に負担がかかり過ぎ、腰、肩、首などにコリや痛みなどのトラブルが起こりやすくなる。そのため、姿勢も崩れ、無理な姿勢を維持しようと筋肉がさらに緊張してガチガチに硬くなる。伸縮性が低下し、膝にも悪影響が出やすくなるという。
「脳の血流が悪くなり、集中力や認知機能の低下、メンタルヘルスの悪化とも関係が深いというデータも出てきています」(岡教授)
大人だけではない。「座り過ぎ」は、子どもにとっても大きな問題だ。学力への影響がみられるという。
座り過ぎの研究で有名なカナダの研究者、トランブレイらの研究では、テレビやDVDの視聴、パソコンやテレビゲームを使用する時間が1日2時間より多いことは、学業に悪影響があることが認められている。さらに、このような座り過ぎが1日3時間より多くなると、IQ得点の低さとも関連することが示されている。そのため、米国の小児科学会では、子どもの座位時間を減らすため、余暇のスクリーン時間を1日あたり2時間以下とすることが推奨されているという。
「しかし、この基準値を満たしている日本の子どもの割合は、男子で36%、女子で41%と決して多くはなく、半数以上の子どもは基準を満たしていない状況です」(同)
座り過ぎが問題だとすれば、週末にジムなどで運動をすれば帳消しになるのでは?
そう考える人は少なくないだろう。だがそういう人ほど、座り過ぎの落とし穴にはまりやすい。岡教授は、こうした人たちは「アクティブカウチポテト」と呼ばれ、自分では活動的(アクティブ)なつもりでも、残念ながら実際は、ソファ(カウチ)に座ってポテトチップを食べる人々と大差ないと言う。
「たとえ週末に少しくらい運動をしても、座り続ける時間が多いと、死亡リスクはほとんど軽減されないことがわかっています。平日は仕事で長時間座っていても、休日はよく運動をしているから座り過ぎのリスクは解消できる。そういう思い込みこそ危険です」(同)
(編集部・野村昌二)
※AERA 2019年4月8日号より抜粋