卓球男子シングルスの張本智和が、格上の中国選手を倒し15歳で世界を制した。彼を急成長させたのは、両親の教えと卓球界全体の改革だ。
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韓国・仁川(インチョン)で12月16日に開催された卓球のワールドツアー年間王者を決めるグランドファイナル男子シングルス決勝。世界ランキング5位の張本智和(15)が、同4位の林高遠(リンガオユエン=中国)を撃破し大会史上最年少で優勝した。張本は、自信に満ちた顔で、さらなる先を見つめた。
「東京五輪は世界ランク1位で迎えたいです」
2017年6月の世界選手権は当時ランク69位ながら8強入り。準々決勝で中国のトップ選手に敗れ「あと1、2年あれば勝てる」と悔しがった。その言葉通り有言実行の成長を見せ、19年1月には世界ランク3位に浮上する見通しだ。日本男子としては水谷隼(29)の4位を上回り、過去最高位となる。
このように、わずか1年半でスピード成長した源は何なのか。多くの卓球関係者が口を揃えるのはこれだ。
「両親が素晴らしい」
かつて世界選手権中国代表だった母・凌(りん)と、中国の国体男子ダブルスで3位になったことのある父・宇(ゆ)。ともに元選手で指導者のため、厳しい英才教育を想像しがちだが、子どもを追い込むようなスパルタではない。
母親は少し前まで智和について、こう話していた。
「卓球で生きていかなくていい。とにかく勉強してほしい」
小学1年生から学習塾、3年生から英語塾へ。勉強ができた智和は楽しそうに通った。
「お母さんは僕が卓球で勝つより、テストで100点のほうが喜ぶ」
父親によれば、中国も学歴社会。一人っ子政策は終わったが、子どもは両親と祖父母6人から愛情を注がれる「六つの財布を持つ小皇帝」と言われ、親の過保護は社会問題だ。
それゆえなのか、張本家ではわが子を卓球選手にする以上に「自分で物事を考えられる自立した大人にする」という大局的な見地に立つことを優先してきた。週末に大会で賞状やトロフィーを持ち帰ってきても、慢心しないよう気を配った。週明けに学校へ行く智和に向かって父親はこう戒めたという。