「ルールの多くは、指導しやすいからという理由で導入され、一度決めたらそのまま。それを押し付けることが子どものためとは思えません。休み時間は委員会の話し合いをしたいとか、少食の子は給食をすべて食べられないとか事情があります。実態に応じてルールは変える。学校全体でできないなら、担任が判断すればいいと思います」
勤務先では3学期に、次年度に向けて改善点などを話し合う職員会議がある。女性教員はそうした場で実態に合わないルールの撤廃を提案してきた。「特別扱いを認めると収拾がつかない」「トラブルが起きたらどうするのか」などと反対されることもある。それでも少しずつ耳を傾けてもらえるようになったのは、女性教員自身が、学級崩壊していたクラスを立て直した実績があるから。さらに人望の厚い男性教員が、一緒に説得してくれることも大きい。
「教員同士で信頼関係がしっかり築けると物事は動くなと実感しています」
熊本大学の苫野一徳・准教授(哲学・教育学)は、学校の不自由さを解消するため、「職員室の同調圧力をなくすことも重要だ」と指摘する。苫野さんが提案するのは、校内研修などを活用した「チームビルディング」。自由に対話できる関係性を作るのが狙いだ。
校内研修では授業方法の研究などが多いが、苫野さんが勧めるのは、教員同士が「なぜ自分は教師になったのか」「どんな学校をつくりたいのか」など自身の「根っこ」について話し合うこと。チーム作りの専門家に入ってもらうのも手だという。
「教員自身が安心して自分を開示する場を作ることが大事。ポジティブなテーマで根っこを掘り合うことで、部活に対する熱意が違って日頃反目していた教員同士が、共感し合えるようになるケースもあります」
苫野さんは行事や校則についても、何のためか、なぜ一律で縛るのか、「そもそも」の部分を話し合うことを勧める。
「言われたことを言われた通りにするよう教育された子が、自分の頭で考えられる大人にはなれません。ルールで縛ることは教師と子どもたち双方の成長する力を奪ってしまう。まずは教員同士が対話し、互いの違いを認め合うことから始めてほしい」
(編集部・石田かおる、石臥薫子)
※AERA 2018年12月10日号