教える意欲を奪うブラック残業や、校則に疑問を感じても口に出せない職員室の空気。「もう限界」「何かがおかしい」……。学校現場を変えるために、先生たちが動き出した。
【先生の本音アンケート結果】教員の働き方改革は前進していると感じる?
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11月13日。東京・霞が関の文部科学省で開かれていた中央教育審議会(中教審)の「学校における働き方改革特別部会」。その傍聴席に、現役の高校教員、斉藤ひでみさん(ハンドル名)がいた。ツイッターで6千人超のフォロワーを持つ教員界では異色の存在だ。
昨今、部活動顧問の強要や長時間労働について、教員たちがツイッターで声を上げ、「教員の働き方改革」が国レベルで議論されるようになった。そのうねりの中心の一人が斉藤さんだ。
「教師になって7年。何人もの同僚が心の病で休職したり、過労で倒れたりしてきました。昨年8月、何かが変わるかもと期待して特別部会を傍聴しました。でも現場の切実さとかけ離れた議論に愕然としたんです」
その後、斉藤さんは思いを同じくする教員グループと「現職審議会」を立ち上げ、11月には緊急提言として、「無限残業の根源である給特法(公立学校教員の給与に関する特別措置法)の改正」「過熱した部活の改革」「授業準備や休憩時間の確保」など5項目を訴えた。
それから1年。中教審の最終答申は年明けだが、斉藤さんは苛立ちを隠せない。自身や内田良・名古屋大学大学院准教授が、改革の「本丸」と位置づける給特法改正について、13日の部会では言及はわずかだったのだ。
1972年に施行された給特法は、一言でいえば、教員を定額で「働かせ放題」にすることを容認している法律だ。小中学校教員の平均残業時間が週2時間弱という今では考えられないほど少なかった66年度のデータをもとに「教職調整額」(基本給の4%)を払う代わりに、「時間外手当や休日勤務手当の支給は行わない」と定めている。
「過労死ラインを超えて働いても、給特法があるために『自ら望んだ活動にすぎず、残業ではない』とみなされる。これでは管理職にも残業抑止の意識が生まれません」(斉藤さん)