映画「ファンタビ」シリーズでは、リアルな小道具が大活躍する。造形美術監督は映画「ハリー・ポッター」シリーズすべてにもかかわったピエール・ボハナさん。実は日本の「あれ」からアイデアがひらめくという。
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いやおうなしに目を奪われてしまう。魔法のトランクは、当時多かった圧縮したボール紙に革を貼った趣。実際はカーボンファイバーで17個つくり、激しいアクションにも対応した。冒険と魔法をテーマにした「ハリー・ポッター」や新シリーズ「ファンタスティック・ビースト」の小道具は、物語のカギを握る重要な「役どころ」だ。
最新作「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」ではどうなのか。造形美術監督のピエール・ボハナさんに聞いた。
「ストーリーで描かれる世界観に没頭するあまり、小道具も違和感がなさすぎて、いつどこで使われていたのか気づかなかったというのが理想です(笑)」
「ファンタビ」は1920年代の欧米都市で巻き起こる物語。「ハリー・ポッター」の作品群が魔法魔術学校を舞台に描かれていたのと比べると、大人寄りのストーリー展開だ。時間軸も70年ほどさかのぼる。
おとぎ話ではなく、あくまでも時代劇。リアリティーを追求するがゆえに、小道具の製作は「猛烈な作業量」を要した。
脚本はあるものの、小道具の構想はゼロから練る。
「空中に浮かんでいるほうがいい? 青色に変化させる?」
ひとつの小道具をめぐって、議論が数カ月に及ぶこともある。
「自由に発想し、みんなに発言権を与える。チームの創造性をいかに高めるかが私の役目です」(ボハナさん)
ここからアイデアを形にするための試行錯誤が果てしなく続く。デザインがよくても、つくってみたら使えないことも。失敗してはつくり直す。せっかくつくっても、映画の脚本が変更されればゼロに戻る。舞台装置や音楽、照明や衣装が決まっていく段階で、映画監督から「こんな小道具が欲しい」と注文されることもある。