「ハリー・ポッター」に第1作から関わるボハナさんにとっても、毎回が新しい挑戦。支えになるのは、長年一緒に取り組んできたチームの存在だ。

 そもそも、車や船をつくる見習いだったボハナさん。エンジニアとして、ものづくりに携わっていた。その後コマーシャルの制作を経て、いまの仕事に。
「職種は違うけれど、ものづくりとチームワークの経験がすべて今に生かされている」

 そんなボハナさんが大切にしているのは、人がモノに対して感じる「愛着」の部分だ。

「私たちは充実した機能だけを求めて何かを手に入れたいと思わない。色づかいや形などに心を動かされる。小道具も、ただの道具ではありません」
 アイデアや議論を積み重ね、試作を繰り返してこそ、人間の感性に訴える魅力が宿る。

 ヒントにしているのは、日本の「ものづくり」だ。ボハナさんは皿や湯飲みなど、日本の陶磁器が大好き。小さいころは日本のアニメを観て育ち、ゴジラの大ファンだった。今も、魔術をテーマにした日本の映画作品からインスピレーションを得る。

「魔法とは予想を裏切られる驚き。私たちの生活とともにある」

 小道具製作は大変だけど「面白くてやめられない」というボハナさん。その理由は、ものづくりを通じて驚きを演出するワクワク感にある。(ライター・斉藤真紀子)

AERA 2018年12月3日号