例えば、PTAをやめて近隣の子で班を組み集団登校する「登校班」をはずされた事例。非会員家庭の子どもが登校班に入れないという問題が2年ほど続いたが、校長や地区の保護者たちとが話し合い、先月ようやく、登校班への復帰が認められた。この校長は言う。
「子どもには関係ないことなので、何とかしたいと思って話し合いの場を設け、解決することができた」
都内の区立小学校のPTAのケースでは、「登校班はずし」を告げられていた保護者が、間違った対応を認めた校長から謝罪を受け、解決に至ったという。子ども本人が登校班で通うことを希望せず、現在は1人で通わせているが、この保護者は、
「非会員家庭の子は登校班に入れないという前例を作らずに済み、ほっとしている」
と言う。問題解決のカギを握るのは校長や教育委員会だ。どちらの例も、学校側が「非会員家庭の子どもであっても、登校班から排除しない」という方針を明確に示したことで、保護者が納得するという経過を辿っている。最初は反発が強くても、学校側が「子どもはあくまで平等に扱う」という姿勢を貫くことが肝心なのだ。
PTA問題に詳しい文化学園大学教授の加藤薫さんは言う。
「学校が関わる集団登下校において差別はあってはならないこと。PTAなどに学校が働きかけても排除が続く場合は、学校主体で班編成をするなり、登校班をやめて個人登校に切り替えるなり、毅然とした態度で臨むことが重要です」
PTAの退会トラブルの多くは、PTA役員が、退会を思いとどまらせる意図で「子どもに不利益がある」という「脅し文句」を使うケースも多く、現実に子どもに不利益を科すところまではいかないことがほとんどだ。校長、教育委員会、文部科学省へと相談が持ち上がっていくなかで、「PTAは保護者の加入、非加入に関係なく、全ての子どもを平等に扱ってください」と「指導」が入れば、事態が収まることも多い。
卒業記念品など子ども全員に配る物品については、前に書いたように別途実費を徴収する方法があるほか、PTA予算で購入するのをやめて、公費や私費(教材費や卒業対策費などの学校徴収金)をあてることで解決するケースもある。
今後、共働き家庭がさらに増えると、仕事などで忙しくPTA活動に参加できないという家庭は増えるだろう。「本来PTAは任意加入の団体で、非会員家庭の子どもも会員家庭の子と同様に扱うもの」という認識を改めて確認することはもちろん、同時に、PTA活動の効率化や業務のスリム化を進めて、多くの人が参加したいと思えるような組織に変革しなければ、存続は難しいだろう。(PTAジャーナリスト・大塚玲子)
※AERA 2018年11月12日号より抜粋