「娘たちには私が認知症になっても、お酒も飲ませて、食べたいものを何でも食べさせてって言ってるんです。体に悪いからと減塩で低カロリーの料理ばかりじゃ毎日が楽しくないでしょ。母の世話を通して、自分がどんなふうに最後の日々を過ごしたいかを子どもに伝えておく重要性を実感しました」

 自分のような思いをする人を一人でも減らしたい。そんな思いを安藤さんは新著『“介護後”うつ』(光文社)につづった。

「今、介護と闘っている人は本など読む余裕はないかもしれない。人のアドバイスも耳に入らないかもしれない。私がそうだったからよくわかります。でも、ちょっとでいいから考えてほしい」と呼びかける。安藤さんは孫の存在が介護後うつ脱出のきっかけになった。家庭環境は人それぞれだが、すべての人に共通するのは「介護の先にも人生は続く」ということだ。

「自分を幸せにできる何かを見つけておく。介護する人が幸せじゃなきゃ、いいケアはできないんです。日々のお世話はプロにおまかせできる時代なんだから、楽をすることを罪悪に思わないで。それでも、介護職員さんやヘルパーさんには、思い出話はできません。それができるのは家族だけ。思い出話ができるぐらいの余裕を持つことが、結局、ケアを受ける人を幸せにするんだってことを知ってほしいんです」

※AERA 2018年11月12日号

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