西武秩父駅からほど近い、秩父今宮神社の歴史も古い。宮司の塩谷(しおのや)崇之さんが教えてくれた。
「大宝年間に修行中の役行者が秩父を訪れ、村人を苦しめる悪獣毒蛇を調伏するため、八大龍王という龍族の王様を祀ったのが起源とされています」
境内に湧き出る武甲山の伏流水には、生命の源として伊邪那岐(イザナギ)、伊邪那美(イザナミ)の両神が祀られる。
修験道の霊場として発展したが、室町時代に疫病が流行し、疫病退散の力を持つとされる須佐之男命(サノオノミコト)を京都の今宮神社から勧請し、合わせて祀った。
ひときわ目を引く欅の巨木は、樹齢1千年を超えるご神木だ。ここにも、すがすがしい表情で手を合わせている女性2人連れがいた。
「水は穢(けが)れを清め、潤いを与えてくれる。お参りに来る人は、何かが枯れた時に、水が豊かなこの神社で潤いを満たすために来るのかもしれません」
塩谷さんは、普段は東京で弁護士をしており、休日だけ宮司になる。秩父の歴史に関する知識は深い。
「文化を財産として自分たちで語り継いでいかないと。神社は過去と未来の時間軸の交差点にある。世の雑音に惑わされず、自分と向き合っていただけたら」(塩谷さん)
境内にいるだけでリラックスできるのか、ベンチに腰掛けてしばし佇む参拝客も多い。
「ここが心地よいとしたら、山から地下を伝って来た水の力が、地下にも空中にも漲っているからだと思いますよ」(同)
(編集部・熊澤志保)
※AERA 2018年10月15日号より抜粋